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- プレミアム・ブランドにおける「イノベーション」とは?~技術革新の話ではない~
「イノベーション」という言葉から、まず思い浮かぶのは技術革新かもしれません。しかし、プレミアム・ブランドにおいて最も重要な「イノベーション」は多くの場合、デザイン性や、マーケティング力、流通網などの中にあると考えられます。
プレミアム・ブランドにおける「イノベーション」は技術革新の話ではない~スポーツ関連企業の例~
一般的に、「イノベーション」は、技術革新を意味するものでしょう。この観点からいうと、アパレル業界でいえば、新しい素材や既存技術の新たな応用などが考えられます。
例として、ゴアテックス(防水耐久性・透湿性・防風性を兼ね備えた素材)やベルクロ(面ファスナーの一種で日本では一般にマジック・テープと呼ばれるもの)などがありますが、プレミアム・ブランドの中では特にスポーツ関連分野で、この種の技術革新を期待する向きがあるかもしれません。
しかし、実際のところ、スポーツ関連分野においても、技術革新はそれほど多くありません。また、技術革新によって登場する商品は高価ではあるものの、さほどの差別化をもたらさないものです。
ここ最近のトレンドでは、素材や部品の環境性能に焦点を当てていますが、これも商業的な成功要因にはなっていません。
商業的に成功するためには、ファッション・トレンドを正しく予測した上で、創造的なデザイン性と機能性が絶妙なバランスでとれた商品を提供することが重要になります。さらに、その商品をどのように消費者に届けるかという適切な販売戦略、最終的には事業オペレーション力の優位性がカギを握るとみられます。つまり、こうしたところで「イノベーション」を実現することが重要であると考えられます。
この観点からいうと、中国のスポーツ関連企業は優位性をもっているかもしれません。というのも、欧米企業に比べると、サプライチェーン(供給網)は短く(生産現場と消費者の距離が近い)、在庫を多く抱えないオペレーションは、消費者の好みの変化や需要動向により迅速に対応することが可能であるからです。また、中国のスポーツ関連企業は、中国の消費者の消費志向もよく理解しています。中国の消費者が求めているのは必ずしも技術的な革新ではなく、単に、これまでと違うもの、目新しいもの、を求めているのです。
一方、欧米の確立されたスポーツ・ブランドは、既存製品をリニューアルするというだけでも、新素材やパフォーマンスを向上させる機能の追加などが消費者から期待されることが多く、大きなコスト負担になります。
しかし、時には過去を振り返るだけで済むこともあります。例えば、ここ最近、人気が高まっているアディダスの「サンバ」シューズが好例でしょう。「サンバ」はアディダス最古のスニーカーとして知られ、1950年代に雪で凍ったピッチ上で履くサッカーシューズとして誕生しました。アディダスの「サンバ」は、これまで人気が高かったナイキなどが得意とする厚底のスニーカーとは異なり、ヨーロッパのレトロ感あふれる靴底の薄いスニーカー(いわゆるテラス・シューズ)で、消費者には新鮮と受け止められて、市場シェアを拡大しつつあります。
パーソナライゼーションのニーズに応える技術の活用
ただし、プレミアム・ブランド企業が完全に技術革新と無縁であるわけではありません。ここ最近では、消費者が個人のニーズに合わせた商品(パーソナライゼーション)を求める動きもあります。こうしたニーズに応えるため、ファッション小物やアパレル関連の商品を提供するプレミアム・ブランド企業においては、AI(人工知能)や3Dビジュアライゼーション、3Dプリンター、人体計測データベースなどの技術を活用する動きが強まっています。
流通網における「イノベーション」
さらに、アパレル業界における過去数十年にわたる大きな「イノベーション」は流通網にあり、進化し続けています。ただし、いくつかのビジネスモデルは苦戦を強いられています。例えば、マルチ・ブランド・プラットフォームと呼ばれる、複数のブランドを取り扱うオンライン小売企業は、コロナ・ショック後の経済活動再開時より苦戦を強いられました。多くの消費者がオンラインでの購入から実店舗での購入に戻ったことに加えて、積極的な返品ポリシーをとっていたことも仇となりました。購入されたプレミアム・ブランド商品の半分は、返品されたといわれています。この背景には、インフルエンサーによる衝動買い(その後すぐ返品)や、複数の高価なバッグを購入して自宅で実際の商品を比較したあと、いずれかを返品するといった動きが多かったとみられていることなどがあります。また、マルチ・ブランド・プラット・フォームを維持するためのコストは大幅に上昇しているとみられています。
こうした問題の解決策の1つとしては、流通プラットフォームがブランドとの独占的な関係を持つこと(独占契約)です。これにより、利益率の維持・向上に寄与することが期待されます。また、一部の大手ブランド企業傘下のマルチ・ブランド・プラットフォームは、同企業傘下のブランドの製品も販売することなどで、総利益率を維持しています。
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