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- 直近決算が示す、底堅いプレミアム・ブランド需要
●プレミアム・ブランド企業の直近決算では、底堅い需要があることが示された。ただし、分野・企業間格差もあり、銘柄選別が重要に。
●富裕層の顧客の存在や、アジア新興国の消費者の購買力向上などを背景に、中長期的にプレミアム・ブランド需要の拡大が期待できるとの見方には変わりはない。
直近決算が示す、底堅いプレミアム・ブランド需要
これまでに発表されているプレミアム・ブランド企業の直近決算からは、概ねプレミアム・ブランド商品やサービスに対する底堅い需要が続いていることが示されています。ただし、分野ごと、さらには銘柄ごとに強弱もあることから、今後の動向を注視していくことが必要であると考えられます。
高級ブランド|強力なブランド力を有する企業に限れば、引き続き堅調
高級ブランド企業の中では、より強力なブランド力を有する企業が良好な決算を発表しました。具体的には、「カルティエ」や「ヴァンクリーフ&アーペル」などを傘下に有するフィナンシエール・リシュモン(スイス)、「ルイ・ヴィトン」や「クリスチャン・ディオール」などを傘下に有するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(フランス)のほか、エルメス・インターナショナル(フランス)、フェラーリ(イタリア)などの高級ブランドの中でも、よりハイエンドの商品を提供する企業です。相対的に富裕層の顧客を多く抱えるほか、多くの消費者を惹きつけてやまない憧れの「ブランド」でもあります。
一方、バーバリー・グループ(英国)は、2023年10-12月期の既存店売上高が前年同期比-4%の減収と苦戦し、2024年3月期(通期)の利益見通しを下方修正したほか、2024年についても厳しい事業環境が続くとの見方を示しました。バーバリー・グループは高級ブランドの中でも、前述のハイエンドの商品を提供する企業に比べると、価格帯が低く、顧客層の裾野はより広いといった違いがあります。こうした違いが、好決算の流れに追随できなかった要因の1つであると考えられます。
トラベルおよびレジャー関連|中国をはじめアジア地域の回復がけん引
トラベルおよびレジャー関連企業からは、依然として旺盛なトラベル・レジャー需要があることが示されました。トラベル関連の代表格であるホテル運営企業からは、中国をはじめとしたアジアの需要が大きく回復していることが示されました。一方、2024年以降は、コロナ・ショック以降これまでの数年間にみられた急回復局面から、正常化に向かう中で増収・増益率はこれまでに比べると緩やかなものになるとの見方が強まっています。
しかし、アジア・パシフィックをはじめ世界の海外旅行者数はコロナ前の2019年の水準を下回る水準にあり、回復余地は依然として残されていると考えられます。さらに、「モノ消費」だけでなく、体験・経験の価値を重視する「コト消費」の拡大あるいはシフトといった消費トレンドを受けて、トラベル・レジャー需要は中長期的にみても堅調な推移が期待できると考えられます。
スポーツ関連|企業間格差が鮮明に
スポーツ関連のプレミアム・ブランド企業のうち、ナイキ(米国)、アディダス(ドイツ)、プーマ(ドイツ)などが発表した直近四半期決算では、業績の回復は依然として途上であることが示されました。また、今後の見通しについても、多くの企業が世界の景気減速などを考慮し慎重な見方を発表しています。
一方、ルルレモン・アスレティカ(カナダ)は、2023年12月に発表した2023年8-11月期決算で、北米・海外市場ともに販売好調であることや高収益性が維持されていることを示しました。さらに、今後についても新商品投入や海外出店拡大などにより中長期的な成長が期待できるとしており、企業によって業績動向には格差があることが鮮明となっています。
化粧品関連|足元では厳しい環境も、各社は今後の成長に向けた動きを示す
化粧品関連のプレミアム・ブランド企業は、中国市場の回復の遅れやトラベル・リテール関連の低迷といった厳しい環境に直面しています。
足元では厳しい環境ではありますが、各社は今後の成長に向けた動きをみせています。ロレアル(フランス)は、高級ブランドであるプラダ(イタリア)傘下の「ミュウミュウ」のビューティー製品の開発と販売に関して、全世界での長期ライセンス契約を結ぶ(2024年2月9日発表)など、高級ラインの拡充を強化しているほか、中長期的な成長市場としての位置付けに変わりがないとし、中国市場への投資を継続する方針を示しています。一方、エスティ ローダー(米国)は、収益性改善に向けた事業改革を断行することを発表しています。
“プレミアム・ブランド”を、しっかり「選別」することが重要な局面に
プレミアム・ブランド企業は、他の企業が簡単に真似することができない商品・サービスを提供し、主な顧客は、富裕層やよりよいモノやサービスを熱望する消費者です。こうした点で、一般的な消費財・サービスとは一線を画していると考えられます。
しかし、プレミアム・ブランドとは、「エルメス」、「ルイ・ヴィトン」、「フェラーリ」などの超高級ブランドだけではなく、スポーツ、化粧品、食品・飲料(酒類)など幅広い消費セクターに存在し、各分野によっても異なる特色があります。また、同じ分野の中でも、すべての企業が優れたオペレーションが実行されているわけではなく、価格決定力を低下させている企業も存在します。
このため、投資先企業の選定に際しては、単純に北米や中国といった地域別の市場動向だけではなく、各プレミアム・ブランド企業の事業分野やビジネス・モデルをしっかり把握し、選別していくことが必要になると考えます。直近決算においても、分野間、企業間格差があることが示されました。
また、在庫管理が改善し、底堅い成長が期待できるプレミアム・ブランド企業の中には、同業他社に比べて、バリュエーション(投資価値評価)水準が割安で、市場から見過ごされているとみられる銘柄も散見されます。こうした企業の株式については、良好な投資機会となる可能性もあると考えています。
短期的には、世界経済の先行き不透明感や足元の中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりなど、プレミアム・ブランド企業の業績や株価動向にマイナスの影響を及ぼす懸念材料は完全には払しょくされていませんが、中長期的にみたプレミアム・ブランド企業の株式への投資の魅力には変わりがないと考えています。
ファンドの運用に際しては引き続き、消費者の「羨望の的」となるような強力で魅力的なブランド力を確立している企業の中から銘柄をしっかり選別した上で投資を行っていく方針です
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。
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