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バイオ|米大統領選挙でトランプ氏勝利~新政権下でのバイオ医薬品株式を考える
2024/11/20

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概要

●米国大統領選挙でトランプ氏が勝利後、インフレ懸念やロバート・ケネディ・ジュニア氏の保健福祉省長官指名が影響し、バイオ医薬品株式は下落
●ロバート・ケネディ・ジュニア氏が保健福祉省長官を務めるトランプ新政権では、バイオ医薬品業界にとって不透明感は多いものの、プラスの影響も
●バイオ医薬品株式のファンダメンタルズに大きな変化はなし、M&A復活への期待高まる



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■  米国大統領選挙でトランプ氏が勝利後、バイオ医薬品株式は下落

2024年11月6日の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、バイオ医薬品株式の代表的な指数であるナスダック・バイオテクノロジー指数は軟調な動きとなっています。

トランプ氏が選挙期間中に主張していた、大幅な減税や関税の引き上げ、移民対策の強化、拡張的な財政政策の推進といった政策が実施された場合、インフレ圧力が高まるとの見方が強まり、米国の長期金利が高い水準で推移したことが金利感応度が高いバイオ医薬品株式にとってマイナスとなっていたことに加え、2024年11月14日にトランプ次期政権の保健福祉省長官にワクチン懐疑論者であるロバート・ケネディ・ジュニア氏が指名されたことを受けて、医薬品業界全体の先行きに対する不透明感が意識されたことが、ナスダック・バイオテクノロジー指数の下落要因となりました。

 

■  ロバート・ケネディ・ジュニア氏が保健福祉省長官を務めるトランプ新政権下でバイオ医薬品業界が受ける影響について考える

ロバート・ケネディ・ジュニア氏が保健福祉省長官に起用されることが発表されましたが、実際の就任には上院の承認が必要となり、承認されるかどうかについては現時点では不透明な状況にあります。共和党の中にも製薬業界と緊密な関係にある上院議員が複数いる一方、民主党の上院議員の一部が彼を支持していることも事実です。また、仮にロバート・ケネディ・ジュニア氏が保健福祉省の長官に就任したトランプ新政権では、バイオ医薬品業界は以下のような影響が想定されますが、マイナスの影響ばかりではなく、プラスの影響もあると考えられます。

ワクチンに対する懐疑的な姿勢

ロバート・ケネディ・ジュニア氏は、ワクチン懐疑論者として有名ですが、最近では「誰のワクチンも決して取り上げない」と発言しています。新型コロナウイルスワクチンはマイナスの影響を受ける可能性がありますが、その他のワクチンについては長年の使用で効果が証明されているものが多くあります。

また小児用ワクチンの使用については州レベルでの決定が行われることから、連邦政府が変更することは難しいといえます。

米食品医薬品局(FDA)の改革

ロバート・ケネディ・ジュニア氏は、米食品医薬品局(FDA)の改革について言及していますが、具体的な内容は現時点では不明です。彼は食品業界と超加工食品(糖分、塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品のこと)や着色料の使用に対して批判的な姿勢を見せてきたことから、「医薬品」というよりも「食品」の規制に焦点が当たるとの見方もできます。

また政府効率化省を率いるイーロン・マスク氏とビベック・ラマスワミ氏(バイオテクノロジーの起業家としての実績を持つ)は、より効率的で迅速なFDAを望んでおり、このことはバイオ医薬品業界にとってもプラスになります。

バイオ医薬品業界にとって最も影響の大きなことのひとつは、FDA長官の人選ですが、前回のトランプ政権下では、業界からの評価の高いスコット・ゴットリーブ氏をFDA長官に指名したこともあり、新政権下でもこのような優れた人選が期待されます。

薬価の問題

ロバート・ケネディ・ジュニア氏は、欧州と米国の薬価の差についてコメントしています。ただし現在の価格決定メカニズムを変更するためには、医療システム全体の改革が必要であり、これはかなり長期的な課題といえます。

現在、医薬品業界は医薬品の価格を引き上げなくとも、高い利益率を維持してます。医薬品に対する価格圧力は継続するとみられますが、一方で、価格の低下により販売量が増えることで、市場は維持または拡大できるものと考えます。また革新的な医薬品を開発するバイオ医薬品企業は差別化が図られていることで、価格決定力を有しており、これらの企業は価格引き下げの圧力は受けにくいといえます。

インフレ抑制法(IRA)の廃止

トランプ新政権はIRAの修正を試みる可能性があります。現時点では、それが実現可能かどうかは不明ですが、少なくともハリス政権が誕生し、薬価に引き下げ圧力が高まる場合よりも悪化することはないとみています。

このようにワクチン懐疑論者であることから、医薬品業界にとってのネガティブ面が大きく注目を集めているロバート・ケネディ・ジュニア氏の保健福祉省長官起用の発表ですが、FDAの効率化などのプラス面も存在しています。ただし、現時点では不透明なことが多く、視界が開けるのは2025年1月の政権発足後になるでしょう。

また、医薬品業界への規制ではありませんが、トランプ氏が選挙期間中から主張してきた大幅な減税や関税の引き上げ、移民対策の強化、拡張的な財政政策の推進といった政策が実施された場合は、インフレが再燃し、長期金利が高止まりする可能性もあります。バイオ医薬品株式は、金利感応度が相対的に高いことから、今後、金利がどのように変動するかについては注意が必要でしょう。

 

■バイオ医薬品株式のファンダメンタルズに大きな変化はなし、M&A復活への期待高まる

バイオ医薬品企業は、長期的に世界の人口増加と高齢化が同時に進展することが予想される中で、画期的な治療薬を提供し続けると予想されており、相対的に高い利益成長が期待されます。

一方で、バイオ医薬品株式は、比較的長期にわたり株式市場全体に対してアンダーパフォームしてきたこともあり、バリュエーション(投資価値評価)は歴史的に見ても、株式市場全体に対しても割安な水準にあります。さらにロバート・ケネディ・ジュニア氏の保健福祉省長官指名のニュースがネガティブに捉えられたことなどから、一部のテクニカル指標をみると、売られすぎの可能性も出てきています。

また特許切れ問題に直面している大手医薬品企業は、治療薬のラインナップやパイプライン(新薬候補)を充実させることが求められています。そのため大手医薬品企業は、魅力的な新薬候補や高い技術力の獲得を目的にバイオ医薬品企業をターゲットとしたM&A(合併・買収)を行う必要に迫られています。2024年は米国大統領選挙の年でもあり、現時点では2023年のような活発なM&Aの動きは見られていませんが、トランプ新政権が発足し、徐々に政策面での不透明感が解消していけば、M&Aの動きも再び活発化し、株価の上昇に寄与することが期待されています。

引き続き、当ファンドでは、バイオ医薬品企業の事業の収益性や安定性、バリュエーションの水準、株価の下落耐性などを考慮して銘柄選定を行い、リスクを抑えたポートフォリオを構築していく方針です。

 



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