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- 金価格を見通すうえでの重要なポイント
- 金は米ドルの代替資産と見なされるため、米ドルの変動の影響を受ける傾向がある
- 金は金利を生まないため、金利の変動により相対的な魅力度が変化する傾向にある
- 米ドルや金利、金価格を見通すうえで短期的には米国の金融政策の動向が重要に
■ 金価格に影響を与える要因①米ドル
金価格の変動要因は多岐にわたりますが、本レポートでは、その中でも短期的な金価格の主な変動要因として「米ドル」と「金利」についてご紹介します。なお、このような要因は「直ちに、必ず金価格に影響を与える」というものではなく、金融市場の局面によって金価格に影響を及ぼす度合いも変化します。また、当ファンドへの投資を通じて実質的に金に投資する場合、基準価額は金価格に加えて為替の変動の影響を受けます注1。
まず金価格と米ドルとの関係では、金は一般的に米ドルの代替資産と見なされるため、米ドルが主要通貨に対して下落した場合、金の相対的な魅力が向上したととらえられ、金価格は上昇する傾向にあります。図表1は金価格と米ドル指数注2の推移を示したものです。すべての期間において該当するわけではありませんが、米ドル指数の下落局面では金価格が上昇し、米ドル指数の上昇局面では金価格が下落する傾向が見て取れます。
米ドルの主要通貨に対する変動には、各国の財政収支や経常収支、インフレ率などの要因や中央銀行の金融政策、政治的な要因に加えて市場参加者の動向など、多岐にわたる要因が複雑に作用していると考えられます。中でも短期的な要因として各国の金融政策の見通しや金利差に注目が集まりますが、2022年以降の為替市場では、インフレ抑制を目的とする米国の継続的な利上げの実施を背景とした他の主要国・地域との金利差の拡大が、主要通貨に対して米ドルが上昇する主な要因となりました。
注1:為替ヘッジを行った場合でも、為替変動リスクを完全に排除できるものではなく、為替変動の影響を受ける場合があります。
注2:ユーロや円などの主要通貨に対する米ドルの相対価値を示した指数。数値の上昇は主要通貨全体に対する米ドル高の進行を示します。
■ 金価格に影響を与える要因②金利
金は金利を生まない資産であるため、金利が上昇すると金の相対的な魅力が低下し、金価格は下落する傾向にあります。反対に、金利が低下すると金価格は上昇する傾向にあります。
図表2は金価格と米国実質長期金利(以下、実質金利)注3の推移です。これを見ると、すべての期間に該当するとは言えませんが、実質金利の上昇局面では金価格が下落し、実質金利の下落局面では金価格が上昇する傾向が見て取れます。なお、実質金利は名目金利(一般的に表示されている金利)から期待インフレ率を差し引いて算出される金利で、物価の影響を考慮した実質的な金利のことです。
名目金利は、中央銀行の金融政策や景気動向、物価動向などの影響を受けて変化します。期待インフレ率は人々がもつ将来のインフレ率に関する予想を表すものですが、アンケート調査や物価連動国債などの金融資産の価格をもとに把握されており、市場参加者による景気や金融政策に関する予想などにより変化すると考えられます。
足元では、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が年内に追加利上げを実施する可能性を示唆したことなどを受けて、名目金利の上昇に伴い実質金利も上昇し、金価格の上昇を抑える主な要因になっていると考えられます。
注3:長期金利は取引期間が1年以上の資金を貸し借りする際の金利です。一般的には10年物国債利回りが用いられますが、当資料では金融政策に対する感応度や、政策金利の上昇局面における金価格の変化に対する説明力が高いと判断し、2年物国債利回りを用いています。
■ 金価格を見通すうえでの重要なポイント
今後も、FRBの金融政策の動向に対する市場参加者の見通しが米ドルや金利の動向を通じて金価格に大きな影響を与えると想定されます。利上げの打ち止めなど金融政策方針の転換が明確に示され、米ドルや実質金利が低下した場合には、金価格の上昇要因となる可能性があります。
米国の金融政策については、FRBが物価の安定と雇用の最大化を目指すうえで、これまでの利上げなどの効果を見極める段階にあると思われます。利上げの実施など、米国の金融政策を決定する会合である連邦公開市場委員会(FOMC)は年内にあと4回開催される予定注4ですが(7月26日、9月20日、11月1日、12月13日)、その動向を占うポイントとして、主に毎月第1金曜日に発表される雇用統計や15日前後に発表される消費者物価指数(CPI)、下旬に発表される個人消費支出(PCE)に加え、FOMC後に行われるFRBのパウエル議長の会見の内容などが注目されます。
ここまでご紹介してきた金価格の変動要因はあくまで短期的な要因であり、必ずしも長期的な金価格の変動を説明するものではありません。より長期的な視点からは、金の希少性や貴金属としての価値に加え、国籍を持たない通貨としての評価などが金価格に影響するものと考えられます。
注4:作成日時点の情報をもとにしています。通常、2日間にわたって開催されますが、現地時間の2日目を記載しています(日本時間では翌日)。
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