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金との組合わせで高める分散投資効果
2024/11/05

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概要

・金は株式などの主要資産と組合わせることで分散効果が期待される
・金の現物資産としての希少性の高さが金価格上昇の大きな要因となってきた


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米国株式等との組合わせで分散効果が期待される金の値動きの特性

「金」の価格は株式や債券などの主要資産と異なる値動きをする傾向があります。そのため、他の資産と組合せて持つことで、分散効果や資産全体の運用効率を高めることが期待されます。

例として、米国株式と金を50%ずつ保有した場合の過去20年間のパフォーマンスをシミュレーションした結果が図表1と図表2です。図表1は米国株式(円換算)と金(為替ヘッジをしたもの、以下、円ヘッジ)、図表2は米国株式(円換算)と金(為替ヘッジをしていないもの、以下、円換算)を組合せたものです。

米国株式と金を組合せて投資比率をそれぞれ50%に毎月リバランス注1することで、米国株式や金を単体で保有しているよりも値動きが相対的に抑制されたシミュレーション結果となりました注2

注1:図表1、図表2および図表3では、米国株式と金、世界国債に投資し、各資産の毎月のパフォーマンスをふまえて相対的に値上がりしている方を一部売却し、相対的に値下がりしている方を買い増すことで投資比率をそれぞれ一定にすることを指します。
注2:シミュレーションでは取引時の売買コストや保有コスト等の費用および換金時の税金を考慮していません。実際には途中のリバランス時にも毎回、売買コストや税金がかかり、パフォーマンスの低下要因となります。

米国株式に金を組合せることで運用効率が高まる


図表3では、米国株式に金を組合わせることでポートフォリオ全体の値動きを抑制(価格変動リスクを低減)する効果に加えて、運用効率(リスクあたりのリターン)の向上が期待されることを示しています。

曲線上の点で示した米国株式と金の組合せ比率を10%ずつ変化させた場合のリスク・リターンの変化をみると、米国株式に対し金の保有比率を上げていくと(米国株式50%、金50%あたりまで)価格変動リスクが低下し、金の比率を金(円換算)の場合は60%、金(円ヘッジ)の場合は50%とした場合にポートフォリオ全体の運用効率が最大になりました。また、米国株式と世界国債(円ヘッジ)を組合わせた場合では価格変動リスクが大きく低下し、世界国債(円ヘッジ)の保有比率を70%とした場合に運用効率が最大になりました。米国株式に金を組合わせた場合と、世界国債を組合わせた場合を比較すると、金とを組合わせた場合の運用効率やリターンの水準が相対的に高くなったことが分かります。

  金の魅力は金利の低下に伴い相対的に高まる傾向にある

金は利息を生まない資産であるため、金利が低下する局面では投資対象として相対的な魅力が高まることで、価格が上昇する傾向にあります。図表4は、2000年以降に米国の中央銀行が利下げを開始した時点を起点とした金価格の推移を示したものですが、これを見ると、利下げ開始後の金価格は短期的には下落したケースや、変動が大きくなったケースがありましたが、約2年の期間を通してみると(土日などを除くロンドン市場金価格の公表日ベースの500日間)、何れのケースも上昇したことが分かります。

2000年以降の米国の利下げ開始後の期間においては、金価格は2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックの発生直後など、金価格が大きく下落する場面がありました。株式市場などの急落を受けて、損失の制限や利益の確定などを目的として資産売却を行う投資家の動きなどが金価格にも影響を与えたと考えられます。しかし、その後の金価格は相対的に底堅く推移し、早期に下落前の水準に値を戻す傾向が見られました。過去の金融市場混乱時における価格の変化率を見ると、多くの場合において金価格が米国株式などと異なる値動きをするという傾向が確認できます(図表5参照)。

金の主要通貨に対する価値を高めてきた現物資産としての希少性

金の価格に影響を及ぼす要因には、前述の米国金利に加えて、景気動向や国際情勢など多岐にわたりますが、長期的には金の希少性の高さが価格上昇の大きな要因になっていると考えられます。

金はその美しさや腐食に対する耐性、加工の容易さから、装飾品や宗教的な儀式に重用されてきましたが、貨幣としての機能にも注目され、古くから金は通貨そのものとして広く認識されてきました。1971年に金本位制が終了する以前は金が米ドルの価値を裏付ける資産であったことから、今でも金は米ドルと代替関係にあるとみなされています。また、金は実物資産であり、生産手段は主に鉱山からの採掘という制約があるほか、埋蔵量には限りがあり、現在のペースで生産を続けると数十年で枯渇するともいわれています。一方で、米ドルは経済対策や戦費調達などのために政府が必要な量を発行することが可能であり、その供給量は特に2008年の世界金融危機や2020年以降のコロナ禍などの危機的状況において大きく増加してきました。このような差異による金の希少性が米ドルベースでの金価格の上昇に寄与してきたものと考えられます。金を主体として、過去約100年間の米ドルの価値の推移を見た場合、米ドルは金利を考慮しなければ、金に対してその価値が100分の1以下になったと言えます(図表6参照)。

不透明な市場環境で高まる金投資の重要性

実物資産としての希少性が高いことから、金はインフレ時のヘッジ手段として見なされてきました。また、金は国籍を持たず、株式や債券などと異なり発行体の信用リスクがないという特徴を持つことから、金融市場が混乱する局面では資金の逃避先としての役割も果たしてきたと考えられ、金は世代を超えて資産を継承する手段の一つとして認知されてきたといえます。


今後についても、中東の紛争やロシアとウクライナの戦闘などを巡る緊張といった地政学リスクの高まりに加えて、世界経済の減速懸念や米国の連邦債務上限問題などが金融市場の変動を高める要因となることが予想されます。このような不透明な環境においてポートフォリオのリスクを低減することで資産の保全を図りながら、運用効率を高めることで着実なリターンの獲得を目指す資産運用の手段として、金を保有するという重要性が高まっていると考えられます。



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