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- 2024年の金価格を支える主な要因
・金価格は2023年末に過去最高値を更新
・米国の金融政策の転換は金価格にとってプラスの要因に
・金価格を支える世界の中央銀行による金需要
金価格は2023年末に過去最高値を更新
2023年の金価格(当資料ではすべて米ドルベース)は、12月末に過去最高値注1となる1トロイオンスあたり2,078.4ドルを付け、2022年12月末の1トロイオンスあたり1,813.8ドルから14.6%上昇しました。
2023年の金融市場では、米国金利や米ドルの主要通貨に対する上昇など、金価格に対して逆風になると考えられる要因注2が多くみられましたが、中央銀行による積極的な金の購入や地政学的リスクの高まりなどが金価格を下支えする要因になったと考えられます。さらに、年末にかけては米国金利が低下したことや、米ドルが主要通貨に対して下落したことが金価格の上昇に寄与しました(図表1参照)。
2024年についても、米国の金融政策が緩和に転じる可能性が高まっていると考えられる中で米国金利の低下が予想されることに加え、中央銀行による金への高水準の需要が継続すると考えられることなどが金価格の上昇要因になると期待されます。
米国の金融政策の転換は金価格にとってプラスの要因に
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、2023年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定したほか、FOMC参加者の経済見通しを発表しました。その中では、2024年末の政策金利の見通しについて足元の政策金利の誘導目標を下回る水準が示されるなど、2024年内の複数回の利下げの実施が示唆されました(図表2参照)。
経済環境に大きな変化が生じず、この経済見通しの通りに金融政策が実行されると仮定した場合、2022年3月以降の米国の利上げサイクルは既に終わりを迎え、今後は2026年末にかけて利下げが続く可能性があると考えられます。
足元では金融市場で米国の利下げ転換を織り込む動きが急速に進んだと見られるため、その反動から短期的には金利が上昇する可能性もありますが、中長期的には米国金利が低下すると見込まれることは金価格にとってプラス要因になると考えられます。また、米国金利の低下観測を背景に米ドルが主要な通貨に対して下落した場合には、金価格の上昇につながる可能性があると考えられます。
2000年以降ではFRBが利上げサイクルを終了した時点は3回ありました。この3回の利上げ終了時点と、足元の利上げサイクルにおいてFRBが最後に利上げを実施した2023年7月26日を起点とする金価格の推移を示したものが図表3です。これを見ると、利上げ終了後の金価格は短期的には下落したケースがある一方で、過去3回のうち2回(期間②と③)は、その後の景気後退に対応した利下げの実施に伴う米国金利の低下などを背景として、相対的に大きく上昇しました。
金価格を支える世界の中央銀行による金需要
中央銀行による金の保有量(金準備)は2008年の世界金融危機を機に増加傾向となっており、2022年以降はインフレ圧力やロシアのウクライナ侵攻による地政学的な不確実性の高まりなどを背景に新興国を中心に大きく増加しています。
2023年に実施された世界の主要な中央銀行を対象とした調査注3では、金を保有する理由として、長期にわたる資産価値の保全に加えて、危機下における価値の安定性に対する期待や通貨分散の手段として評価する傾向が強いことが示されています。また、米ドルを基軸通貨とした国際通貨システムの変化を受けて、米ドルへの依存度を下げたいという一部の新興国の思惑なども金需要の増加につながっていると考えられます。
注1:2023年12月28日午後のロンドン市場金価格。ロンドン市場では午前と午後の1日2回、値決め(フィキシング)が行われ、金価格として公表されます。
注2:金は利息を生まないため、金利上昇局面では投資対象としての相対的な魅力が低下することで価格が下落する傾向にあると考えられます。また、金は米ドルの代替資産と見なされることから、米ドルが主要通貨に対して上昇する局面では価格が下落する傾向にあります。
注3:ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)による2023年の年次中央銀行調査
米中の対立や不安定な中東情勢に加え、2024年には米国などで大統領選挙が予定されていることなどから、地政学的な不確実性が高い状況が続くと予想される中で、外貨準備を多様化させる動きなどが構造的な要因となり、中央銀行の金に対する需要は今後も底堅い推移となることが予想され、金価格を下支えする要因になると考えられます。
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