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- 金投資と「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」
・金は米ドル建てで取引されるため、円からの投資は米ドル・円の為替変動の影響を受ける
・円高・米ドル安による為替差損の抑制を図るためには為替ヘッジの活用も選択肢に
為替変動の影響を伴う金への投資
金の価格は1トロイオンス(約31.1グラム)あたりの米ドル建てで表されます。そのため、金に投資を行う際には米ドル建ての金の価格変動リスクに加えて米ドル・円の為替変動の影響を受けることにも留意する必要があります。
ピクテ・ゴールド(以下、当ファンド)は「為替ヘッジなし」に加え、為替変動の影響を軽減する「為替ヘッジあり」の2ファンドからお選びいただけます。過去5年のそれぞれの基準価額と米ドル建ての金価格の推移をみると、急激な円安・米ドル高が進んだ2022年以降、「為替ヘッジなし」のリターンは米ドル建ての金価格のリターンを上回りました(図表2参照)。一方で、「為替ヘッジあり」のリターンは為替ヘッジコスト(詳細は後述)の上昇などを背景として相対的に低い水準となりました。
しかし、為替相場は局面によっては大きく変動する傾向があるほか、今後は日米金利差の縮小などに伴い円高・米ドル安が進行する可能性があるため、「為替ヘッジなし」が優位となる状況が続くとは限りません。本稿では、そのような環境下で為替変動による影響を抑制した資産運用を行うための選択肢として、為替ヘッジの活用について考察していきます。
為替ヘッジとは
ヘッジとはリスクを回避するために行う行動で、為替ヘッジは外貨建て資産に投資する際の為替の変動による影響を抑えるために行う手段です注1。また、為替ヘッジを行うに際には一般に為替ヘッジ「コスト」の支払いが生じます注2(図表3参照)。
為替ヘッジの要否についての考え方
米ドル・円の為替ヘッジコストは過去との比較では相対的に高い水準にあるといえますが、為替ヘッジコストは将来の不確実性に備えるための費用であるといえ、過去の水準との比較などから単純に割高であるという評価ができるものではありません。また、米国の利下げなどを背景とする日米政策金利差の縮小に伴い、足元で低下傾向にあります。
米ドル・円の為替レートのボラティリティ(価格変動の大きさ)
為替は比較的変動が大きく、ファンダメンタルズ(基礎的条件)から大きく乖離することもあります。1990年以降の米ドル・円の為替レートの年間騰落率の推移を見ると、最大で±20%程度の変動があることがわかります(図表5参照)。
為替ヘッジによる効果を単純化したシミュレーションで確認
以下では、為替ヘッジによる効果を確認するため、金価格(米ドル建て)と為替レート、為替ヘッジコストについて単純化してシミュレーションを行っていきます。
足元の為替ヘッジコストの水準を踏まえて、金価格と米ドル・円の為替レートがそれぞれ上昇/下落した場合に分けて金投資のリターンの試算を行ったところ、図表6の①で示されるように金価格が上昇し、米ドル高・円安となった場合には為替ヘッジなしが優位となりました。一方、図表6の②で示されるように金価格が下落し、米ドル安・円高になる局面においては、為替変動のマイナスの影響を抑制する効果から為替ヘッジが優位となることがわかります。
なお、金は商品(コモディティ)としての側面だけでなく、無国籍の通貨注5としての側面を持つ資産であり、基軸通貨である米ドルの代替資産と見なされることがあるため、米ドルと逆の動きをする傾向があります。金価格には景気やインフレ、金利の動向や国際情勢など多岐にわたる要因が影響を及ぼすため、全ての局面で米ドルの動きと高い連動性を示すとは言えませんが、図表7の矢印で示した期間などでは逆の動きをする傾向があったことが示唆されています。
注5 金は国によって強制通用力が認められている法定通貨ではありません。
金価格と米ドル・円の為替レートがそれぞれ上昇/下落した場合に分けた金投資のリターンの試算では、為替ヘッジなしの場合、金価格の上昇による基準価額へのプラスの効果が米ドル安・円高によるマイナスの効果によって押し下げられることがわかります(図表8の③参照) 。このように、金投資における為替ヘッジの活用の要否は、為替ヘッジコストの水準のみならず、米ドル・円の為替レートの変動の大きさや見通しなどを踏まえた判断が重要といえます。また、金と他の資産を組合わせた場合の分散投資効果など、金投資に期待する役割も為替ヘッジの活用の要否を考えるうえでは重要な判断材料です。
分散投資効果に及ぼす為替の影響
例えば、投資ポートフォリオの分散投資効果を高めることを目的に金投資を行う場合について考えてみます。金の価格は株式などの主要な資産の価格とは異なる値動きをする傾向があるため、米国株式などとの持ち合わせを行うことで、投資ポートフォリオ全体の値動きを安定させる分散投資効果が期待されます。過去20年間の金と米国の主要な資産の値動きを米ドル建てで見てみると、図表9の左側に示されているように、金と米国株式は相関係数が0.02と低相関の関係にありました。資産間の相関が逆相関(マイナス)の場合はそれぞれの資産が逆の動きをする傾向があること、相関が低い(ゼロに近い)場合は価格の動きに関連性が小さいことを意味します。このことから、金と米国株式は、分散効果が期待できる可能性のある組合わせといえます。
しかし、円からの外貨建て資産への投資を想定した場合、円と外貨の為替レートの変動の影響により、分散投資効果が低下する可能性があることに留意が必要です。図表9の右側には、同期間の金と米国の主要な資産の値動きについて、米ドル・円の為替レートの変動を考慮した円換算後の相関係数を示しています。円換算後では、金と米国株式の相関係数が0.23と米ドル建ての相関係数と比較して高まっていることがわかります。依然としてある程度の分散投資効果が見込まれる低相関の関係にあるといえますが、米ドル・円の為替レートの変動が相対的に大きくなる場面においては、円換算後の両資産の連動性が高まることで分散投資効果が低下する可能性があります。そのため、投資ポートフォリオの分散投資効果を高め、中長期的に安定的な値動きを目指すために金投資を行う場合においては、為替ヘッジの活用が有効であると考えられます。
金投資において為替ヘッジを活用することは、2022年以降のように米ドル高・円安が進行する局面においては、為替差益を得る機会を逃すことに加えて、為替ヘッジコストの負担が投資のリターンを低下させる要因となります。
一方で、今後、日本では経済や物価の状況を慎重に判断したうえで追加利上げが実施されると予想されることから、日米金利差の縮小などに伴い円高・米ドル安が進行する可能性があります注7。そのような環境下において、為替変動によるリターンへの影響を抑制した資産運用を行いたい場合や、運用ポートフォリオにおける通貨分散を図りたい場合などには、ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)の活用が有効な手段になると考えられます。
注7 米ドル・円の為替相場は日米金利差以外にも多様な要因が複雑に作用し変動するため、日米金利差の縮小が必ずしも円高・米ドル安につながるとは限りません。
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