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「有事の金」だけじゃない、いま金に注目する背景とは
2022/03/22

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概要

ロシア・ウクライナ問題の影響で「有事の金」として注目されている金ですが、その一方で、一般的に言われる「インフレに強い」という面も金価格にとってプラスに働いているとみられます。今後、米中対立などによりインフレ率は高止まりする可能性があり、1970年代などの高インフレ時に大きく上昇したことのある金への注目度を高めておく必要があるかもしれません。



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米中対立でインフレ率が高止まりの可能性、金にとってはプラス要因か

金は、「有事の金」とも言われ戦争や紛争、急激な景気後退など先行き不透明感が高まる局面で上昇する傾向があり、2022年2月以降、ロシア・ウクライナ問題が深刻化する中でも大きく上昇しました(図表1参照)。しかし足元では、ロシア・ウクライナ両国の停戦交渉の進展期待が高まる中で、金は値動きの荒い展開となっています。一方で、金は2021年3月以降、変動しながらも上昇基調にありますが、上昇に転じたタイミングは米国でインフレ率の高進がみられた時期と重なる点は注目されます。

コロナ禍から経済が急回復する中、サプライチェーンの混乱や人手不足といった供給側の制約に加え、財政刺激効果などによって需要が増加したこと、原油をはじめとする資源価格が高騰したことなどが米国で急激な物価上昇を招きました。当初、「一時的」とみられていたインフレ率の高進はその後も継続しており、こうした流れの中で現物資産の代表格で「インフレに強い」とされる金への注目が高まったとみられます。

2022年2月に発表された米国の消費者物価指数は、価格変動の大きな食品とエネルギーを除いた2022年1月の米個人消費支出(PCE)コアインフレ率で前年同月比5.2%の上昇となり、1983年4月以来の大きな伸びを示すなど、前述の構造的な要因が大きく影響したといえます(図表1参照)。※米PCEコアインフレ率は金融当局が物価の目安として注目している指数です。

1983年といえば東西冷戦が続く時代で、1970年代から80年代前半には第4次中東戦争やオイルショックなどの影響もあり高インフレとなっていましたが、足元の物価上昇は、東西冷戦の時代を彷彿とさせるような動きとなっています。

2018年の米中貿易戦争以降、米中対立の時代となり、特に技術面での覇権争いが進むなど、今後、米国と中国それぞれがサプライチェーンを構築していけばその非効率性から、潜在的なインフレ圧力を生み出す可能性があります。さらに世界的に脱炭素の流れが加速する中、化石燃料への投資が縮小し、供給制約が発生することが物価上昇圧力となる、いわゆるグリーンフレーションを生みだすとの見方も強まってきています。

図表1:金価格と米PCEコアインフレ率(前年同月比)の推移
月次、期間:1962年1月~2022年2月

※金価格:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD ※米PCEコアインフレ率(前年同月比)は1962年1月~2022年1月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

過去、高インフレとなったオイルショック時に金価格は大きく上昇

過去、米国のインフレ率が高水準で推移していた2度のオイルショックが発生した期間に、金価格は大きく上昇しました(図表2参照)。

第1次オイルショック(1973年10月~1974年8月)、第2次オイルショック(1978年10月~1982年4月)ともにエネルギー価格が急騰する中、物価も急騰し、その動きにあわせるように金価格も上昇しました。

その後、物価が落ち着きを取り戻す中で、金価格もある程度下落しましたが、過去の価格水準を切り上げていることがわかります。

ちなみにニクソンショックのあった年である1971年のはじめから第2次オイルショック時の高インフレが鎮静化した1983年7月にかけて金価格は約11倍となり、年率でも21%の上昇となりました。

図表2:金価格と世界株式、米消費者物価指数の推移
月次、米ドルベース、期間:1971年1月末~1983年7月

※米消費者物価指数は前年同月比
※第1次オイルショック:1973年10月~1974年8月、第2次オイルショック:1978年10月~1982年4月
※金:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD、世界株式:MSCI世界株価指数(配当込)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

潜在的な高インフレへの備えとしての金投資

足元のロシア・ウクライナ問題を受けて、原油や天然ガスなどのエネルギー、小麦などの食料品などの価格が、大きく上昇しています。

このことは米中対立やグリーンフレーションといった潜在的なインフレ・リスクとともに、さらに今後、物価を押し上げる要因となる可能性があります。

インフレへの備えとして、金への注目度をこれまで以上に高める必要があるかもしれません。

ご参考:金価格と100日、200日移動平均線の推移
日次、米ドルベース、期間:2017年1月3日~2022年3月16日

※金:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 



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