■ 5月の投資環境

5月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で上昇しました。世界の株式市場は、月初から米国の債務上限問題や米地銀の破綻懸念、欧米の利上げが継続するとの見方などを背景に下落しましたが、その後は、4月の米雇用統計が市場予想を上回り景気後退懸念が和らいだことなどを受けて反発しました。月後半は、米国の債務上限問題をめぐり株式市場は大きく上下する展開となりましたが、月末にかけては米国の大手半導体企業が市場予想を大きく上回る業績見通しを公表したことなどを背景に、AI（人工知能）関連株を中心に世界の株式市場は上昇し、月間でも上昇しました。 業種別では、情報技術、コミュニケーション・サービスなどが大きく上昇した一方、エネルギー、生活必需品、公益事業、素材などが下落しました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は、株式市場の上昇率を下回る上昇となりました。環境マネジメント・サービスセクターは廃棄物処理企業の株価回復にけん引され最も上昇しました。ウエイスト・コネクションズは最近、労働市場の需給の緩和傾向がみられ、また、外部委託のトラック輸送など他のコスト項目におけるコスト・インフレは2023年後半には緩和される可能性があるとみていますが、少なくとも通年の目標である9.5％程度の値上げは達成できる見込みとのコメントをしました。
上下水道ビジネスセクターは、株式市場並みの上昇となりました。サンパウロ州基礎衛生公社は、民営化に対する楽観的な見方や新経営陣による業務の改善、規制の安定性と2025年にかけての見通しなどを背景に上昇しました。
装置製造エンジニアリングセクターは、主にモニタリング関連企業がけん引し小幅に上昇しました。アジレント・テクノロジーとサーモフィッシャーサイエンティフィックは2023年第１四半期決算で業績を下方修正しました。コロナ禍での過剰発注による在庫調整のためバイオプロセシング事業の業績が悪化しました。さらに、顧客である中小型のバイオテクノロジー分野では資金繰りが悪化しており2023年まで改善する見込みは限定的です。一方、ファーガソンとアドバンスト・ドレナージ・システムズ（ADS）などが好調でした。ファーガソンは、4月に株価が調整しましたが、その後、米国の住宅建設に関する投資家心理が緩やかに改善したことなどから大きく反発しました。一方、ADSは、2023年1-3月期の業績が懸念されていたよりも良好であったことから株価が急上昇しました。新築住宅の見通しは依然として弱いものの、現在がボトムであるとの見方が強まっています。

■ 今後の見通し

見通しについては、地政学リスクやインフレの高まりにより不透明感があり、世界各国の購買担当者景気指数（PMI）や企業の景況感がどのように推移するのかにも不透明感が残ります。物価上昇圧力が持続するかどうかや、米国の連邦準備制度理事会（FRB）や欧州中央銀行（ECB）による利上げのタイミングや程度、また、それがどのように株式のバリュエーションに影響を及ぼすか等、見極める必要があると考えます。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。