■ 8月の投資環境

8月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で下落しました。世界の株式市場は、上旬は、格付け会社による米国国債の格下げや米国経済の底堅さを示す経済指標の発表などを受けて米国金利が上昇したことや、ユーロ圏や中国の景況感悪化などが嫌気され下落しました。中旬にかけても、7月の米連邦公開市場委員会（FOMC）議事録が公表され利上げの継続が示唆されたことに加え、英国の追加利上げ観測、中国経済の先行き懸念などを背景に株式市場は下落基調となりました。その後は、米連邦準備制度理事会（FRB）のパウエル議長の講演を受けて9月の利上げが見送られるとの観測が強まったことや、主要半導体銘柄の好決算などを背景に株式市場は反発しましたが、月間では下落となりました。

業種別では、エネルギーとヘルスケアが上昇し、コミュニケーション・サービスは相対的に小幅な下落にとどまりました。一方、公益事業、素材、生活必需品、金融などは相対的に下落率が大きくなりました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は、株式市場が下落するなか、相対的に小幅な下落にとどまりました。装置製造・エンジニアリングセクターは、前月に続き好調だったダナハーやサーモフィッシャーサイエンティフィックなどモニタリング関連企業が貢献し、最も堅調でした。市場はこれらの企業についてバイオプロセス事業の谷を織り込み、投資家は市場を上回る成長と利益見通しの改善を評価し始めていると見られます。ダナハーは、水関連事業および環境関連事業について、「ベラルト」という社名で9月中に分離すると発表しました。また、株価水準が魅力的で化学製品販売事業において収益正常化が引き続き期待されるブレンタグが大きく貢献しました。一方、期待を上回る四半期決算報告および通期業績見通しを引き上げたザイレムは、利益確定の売却にさらされ軟調となりました。

環境マネジメント・サービスセクターは、廃棄物処理関連企業が軟調だった一方、コンサルティング関連企業は引き続き価格が良好に推移したことや豊富な受注残が評価され、堅調な展開となりました。上下水道ビジネスセクターは、主にエッセンシャル・ユーティリティーズやアメリカン・ウォーター・ワークスなどが下落しました。両社は、8月に米10年国債利回りが年初来最高となるなど、引き続き投資環境の悪化の影響を受けています。

■ 今後の見通し

見通しについては、地政学リスクやインフレの高まりにより不透明感があり、世界各国の購買担当者景気指数（PMI）や企業の景況感がどのように推移するのかについても不透明感が残ります。物価上昇圧力が持続するかどうかや、米連邦準備制度理事会（FRB）や欧州中央銀行（ECB）による利上げのタイミングや程度、また、それがどのように株式のバリュエーションに影響を及ぼすか等、見極める必要があると考えます。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。