■ 6月の投資環境

6月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で上昇しました。世界の株式市場は、前月から続くAI（人工知能）関連業界の成長期待に加え、米連邦政府の債務上限問題が解決したこと、ユーロ圏や米国のインフレ率が鈍化したことなどを背景に、月半ばにかけて上昇基調となりました。しかしその後は、米金融当局者の発言を受けて米国の年内の追加利上げ観測が強まったことや、ユーロ圏および米国の総合購買担当者景気指数（PMI）が低下し景気の先行き懸念が高まったことなどから、株式市場は軟調な推移となりました。月末にかけては、米国の良好な経済指標の発表が続いたことなどから株式市場は反発し、月間でも上昇となりました。業種別では、すべての業種が上昇する中、一般消費財・サービス、資本財・サービス、素材などが相対的に大きく上昇した一方、公益事業、生活必需品、コミュニケーション・サービスなどは相対的に小幅な上昇にとどまりました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は、すべてのセクターが上昇し、株式市場の上昇率を上回る上昇となりました。

装置製造・エンジニアリングセクターは最も上昇しました。ザイレムやペンテアなど地方自治体のインフラ関連銘柄、およびフォーチュン・ブランズ・イノベーションズなどの消費関連銘柄にけん引され、好調なパフォーマンスとなりました。ザイレムはイボクア・ウォーター・テクノロジーズとの合併の可能性や、１月のイドリカ社との提携によって強化された公益企業向けの技術開発が注目されました。また、ペンテアはプール事業について昨年は懸念が高まりましたが、今年はその懸念を超える回復力を見せており、好調な株価推移が続いています。消費関連銘柄では、フォーチュン・ブランズ・イノベーションズが最も貢献しました。一方、韓国の家電メーカーのコーウェイが下落しました。ネットマーブル社による株式取得とその後の減配により、投資家の投資意欲が低下しています。

環境マネジメント・サービスセクターは、コンサルティング関連、および廃棄物処理銘柄が上昇し、好調なパフォーマンスとなりました。コンサルティング関連企業は、米国における債務上限問題の解決の恩恵を受けました。同業他社と比較しても、州や地方自治体の事業に比べ連邦政府の事業の依存度が高いテトラ・テックは、連邦議会の足踏み状態が解消されたことで投資家心理と信頼感が改善し株価が上昇に転じました。リパブリック・サービシーズは、業界再編が進む中で、継続的な利益率上昇を背景に株価は大きく上昇しました。

上下水道ビジネスセクターは、欧州、および新興国のコンセッション銘柄がパフォーマンスをけん引しましたが、3セクターで最も低い上昇率となりました。ヴェオリア・エンバイロメントとサンパウロ州基礎衛生公社は両社とも事業環境が引き続き良好で、順調な事業の伸展と魅力的な株価水準が評価されました。一方、カリフォルニア・ウォーター・サービス・グループは、カリフォルニア州での水道料金の値上げ申請に対する承認がさらに遅延していることから、通年の業績予想に不透明感が増し、大きく下落しました。

■ 今後の見通し

見通しについては、地政学リスクやインフレの高まりにより不透明感があり、世界各国の購買担当者景気指数（PMI）や企業の景況感がどのように推移するのかについても不透明感が残ります。物価上昇圧力が持続するかどうかや、米連邦準備制度理事会（FRB）や欧州中央銀行（ECB）による利上げのタイミングや程度、また、それがどのように株式のバリュエーションに影響を及ぼすか等、見極める必要があると考えます。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。