■ 4月の投資環境

4月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で下落しました。

世界の株式市場は、上旬に米ISM製造業景況指数や米雇用統計が市場予想を上回る中、米金融当局者が利下げについて慎重な姿勢を示したことなどを背景に下落しましたが、ユーロ圏のインフレ鈍化などがプラス材料となり小幅な下落にとどまりました。しかし中旬には、米国の消費者物価指数が市場予想を上回る伸びとなったことやパウエル米連邦準備制度理事会（FRB）議長の発言などを受けて米国の利下げ開始が先延ばしされるとの見方が強まったことに加え、中東情勢の緊迫化懸念などから株式市場は大きく下落しました。下旬には良好な企業決算などを受けて世界の株式市場は上昇に転じましたが、月間では下落となりました。

業種別では、エネルギー、公益事業などが上昇した一方、不動産、ヘルスケア、情報技術、一般消費財・サービスなどが相対的に大きく下落しました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は、株式市場を上回る下落となりました。

環境マネジメントサービス、上下水道サービスの両セクターは比較的堅調でしたが、装置製造・エンジニアリングセクターの下落が大きくなりました。装置製造・エンジニアリングセクターでは、主に消費関連銘柄の苦戦が目立ちました。なかでもフォーチュン・ブランズ・イノベーションは、米国債の利回り上昇を背景に住宅需要が鈍化し、同社の家庭用品の売上げへの影響が懸念され下落しました。また、アイデックスは予想を上回る良好な四半期業績を発表したにも関わらず下落しました。市場では年後半のライフサイエンス関連製品の回復見通しの弱さが懸念されたものとみられます。ただし、水関連製品は引き続き好調でした。一方、ザイレムは米国の飲料水に含まれる化学物質（PFAS）に厳格な制限を課す米環境保護庁（EPA）規則の発表を受けて、昨年10月以降堅調な展開が継続しています。2029年までにこの規制に対応するために数十億ドル規模の投資が必要になるとされており、同社の水処理ソリューション事業では、好調な受注が見込まれています。べラルトも好調な四半期業績の発表を受けて堅調でした。主力の水質事業が堅調であるほか個人消費のセンチメントが改善しており製品品質管理業も堅調さが増しています。利益率も予想以上で、通期の業績見通しを引き上げました。

環境マネジメント・サービスセクターでは、リパブリック・サービシズが史上最高値を更新しました。同業3社も計画的に設備の稼働率を引き下げたものの、料金は会社計画を上回ったこともプラス要因になりました。上下水道サービスセクターは、米国及び英国の規制下の水道企業が特に堅調でした。アメリカン・ウォーター・ワークスは、飲料水のPFAS規制が最終的に水道会社にさらに2年間の対応するための猶予が与えられたことで株価が反転上昇しました。企業は初期モニタリングを完了するために2027年までの3年間とPFASの削減策を実施するために2029年までの5年間の猶予が与えられることになっています。

■ 今後の見通し

地政学的な緊張が続き、インフレがまだ主要な中央銀行の目標を上回っているにもかかわらず、マクロ経済の見通しは徐々に改善しています。グローバルでみたPMIは依然として景気拡大判断の基準となる50を下回っていますが、2023年の最低値から米国、ヨーロッパ、中国で順次改善の兆しを見せています。インフレは概ね正しい方向に向かっており、このことは時間の経過とともに今後、金融緩和へ向かうことを支えるはずです。2024年の米国の住宅建設の見通しは、高金利を背景に抑えられたものになると予想していますが、長期的には供給不足を反映して需要が回復していくでしょう。

水関連の企業については、米国の財政プログラムに基づく受注が増加し始めており、これが米国に拠点を置く地方自治体のインフラ関連企業や、多角経営産業、コンサルティング企業の収益を支えると予想しています。また、廃棄物処理と上下水道関連の企業は、料金の上昇とコスト低下による利益率の改善による恩恵を見込んでいます。過去数四半期にわたり装置製造・エンジニアリングの企業の利益を圧迫してきた流通在庫の削減の動きが、特にモニタリング分野において、今年の下半期から解消される兆しがあります。

水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響を受けた世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。