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- ピクテのインド株式運用チームが体感、インドの「今」 2024(1)
●当ファンドは、発展が期待できる産業において、誠実な経営陣によって経営されている優良企業の株式を厳選した上で投資を行う、アクティブ・ファンド。投資先企業の選定の過程では、現地インドでの企業訪問や人々との交流から得られる生の情報も重視。
●今年6月、ピクテのインド株式運用チームのリード・マネージャー、プラシャント・コタリがインドを再訪。この訪問で得た知見の一部を紹介します。
予想外の結果となった総選挙|「けん制」されはしたが、「拒否」されたわけではない、モディ政権
今回のインド訪問は、総選挙(下院選挙、6月4日開票)の熱狂冷めやらぬ時期と重なりました。そのため、選挙の「熱気」を肌で感じることができた、貴重な機会となりました。
総選挙の結果は予想外の結果となったため、市場関係者は大きく動揺しました。事前予想では、与党インド人民党(BJP)が単独過半数を獲得するとみられたものの、実際はBJPが大きく議席数を減らし、単独過半数割れとなったのです。
ただし、BJPは単独過半数を獲得できなかったものの、BJPを主軸とする与党連合・国民民主同盟(NDA)は、過半数を維持し、連立政権として3期目のモディ政権が誕生しました。
BJPが大きく議席数を減らし、連立を組むことを余儀なくされた理由には、政権側の過信、農村部の苦境、ヒンドゥー教政治に対する人々の疲れ、など様々な要因があると考えられます。選挙民からのメッセージは、「モディ首相、私たちはあなたを支持していますが、盲目的な支持ではありません。より良い政策運営を期待しています。次の選挙で勝利を目指すなら、一部の国民ではなく、すべての国民を考慮した経済政策を実施してください。良い仕事を続け、同時に過激派は抑えてください」というものではないかと解釈しています。このような民意が示されたことは、インドでは民主主義が健全に機能している証拠であると、むしろポジティブな評価をすべきと考えます。
政策を推進する最終的な力は、たった1人の人物によってもたらされるものではなく、健全な民主主義という制度的な枠組みと、多くの進歩的な人々が存在するといった強みがあることによって、もたらされると考えられます。今回の選挙結果は、モディ政権に対して、「けん制するが、拒否しない」、という判断であり、「けん制しない」あるいは「拒否する」という、どちらか極端な判断よりも、インド社会・経済にとってずっと好ましいものであるとみています。
街中で垣間見た政権与党の「過信」
今回の訪問では、インド最大の州であるウッタル・プラデシュ州(人口およそ2.4億人)にも立ち寄りました。この州でBJPは大きく議席を失う結果となりました。同州の都市の1つであるアヨーディヤには、もともとイスラム教のモスクがあった場所に、新しい壮大なヒンドゥー教の寺院が建立され、2024年1月、その完成を祝う式典が盛大に執り行われました。モディ首相は、その式典に中心的な立場で参加していました。この寺院の建立は、ヒンドゥー至上主義をその理念とするBJPの総選挙における勝利にも貢献すると期待されていましたが、皮肉なことに、アヨーディヤの地でもBJPは議席を失いました。
この結果は何を意味しているでしょうか?下の写真は、アヨーディアの街中でみた風景です。都市整備が進められ、道路を拡張する過程で、人々の家や店は手あたり次第取り壊されていました。これが問題にならないという政権側の過信が、選挙結果にあらわれたのではないかと考えています。今後のモディ政権には、一方的な開発ではなく、多様な民意がある中で合意を形成し、バランスの取れた開発を行うことが求められると思われます。
鉄道インフラの進歩を実感
アヨーディヤへの旅は、2019年より運航が開始されたヴァンデ・バラト・エクスプレスを利用しました。この高速列車は、日本の新幹線のようにもみえますが、新幹線ほどの速度ではありません(最高速度は時速160km)。しかし、乗り心地は非常に快適で、食事のケータリングサービスなどのおもてなしも提供されていました。鉄道インフラについては、依然として発展の余地は大きく残るものの、確実に進歩を遂げていると実感しました。
モバイル端末がもたらす革命
インド国内のほとんどの空港は、非常によく整備されています。故郷でもある、ラジャスタン州の小さな都市ウダイプールでも、空港のすべてのソファーやベンチにモバイル端末の充電スポットが整備されていました。
街の露天商からマンゴーを購入したい、というときもモバイルウォレットを使って購入するので、モバイル端末の充電ポイントがあることは大変便利です。
今回のインド訪問では、インド決済公社(NPCI)の議長とのミーティングの機会もありました。この公社はデジタル決済インフラの創設を担っています。インドにおけるデジタル決済の約80%がインド決済公社が提供する電子決済システム(UPI)を通じて行われ、毎日の取引回数はおよそ10億にものぼるとのことでした。
インド(およびアジアの他の地域)でデジタル決済が普及した主な理由は、QRコードのようなソフトウェアに基づく基盤設備にあります。これはハードウェア主導の決済インフラが発達している欧米とは事情が異なる点です。
モバイル端末は、インドでのビジネスの進め方を革命的に変化させる中心的な役割を果たしています。そのため、常に使用できるように、充電しておくことがなにより重要です。
フードデリバリー大手ゾマトの子会社であるブリンキット(食料品や日用品の短時間配達を行う)の配達拠点の1つを訪問しました。彼らは、注文を受けてから極めて短時間(およそ20分以内)のうちに、食料品などの商品を配達する方法(それも利益を確保しながら)を編み出した世界初の企業であるとみています。消費者が、モバイルアプリを通じて商品を注文をし、ギグワーカー(インターネットを介して仕事を請け負う労働者)が10分以内に注文された商品を受け取り、次の10分で自転車で配達します。配達拠点となる倉庫は暗い路地にあり(賃料の安さが重視されている)、そこで配達員に彼らがどのように仕事をこなしているかを実際に教えてもらう機会がありました。同時に、彼らのギグワークを仲介するアプリをみせてもらいました。みせてもらった例では、その日の注文の約66%が注文から15分以内に配達されていたことを示しており、驚異的なビジネスモデルであると感じました。
次号につづく。
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