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- ファンド・マネージャーの視点|インド株式、新たなる夜明け
世界の政治・経済におけるインドの影響力の高まりに加えて、インド経済の成長力、インド企業の良好なファンダメンタルズ等を考慮すると、今後数年にわたって、インド株式は相対的に大きく上昇することが期待できるとみられ、世界の株式市場におけるインド株式の存在感は増していくものと考えています。
歴史的な偉業を成し遂げ続ける、インド
2022年、インドは世界第5位の経済大国となりました。また、2023年8月後半、インド宇宙研究機関(ISRO)の無人月面探査機「チャンドラヤーン3号」は、世界で初めて月の南極への着陸に成功しました。さらに2023年9月、インドは議長国としてG20ニューデリー・サミットを主催し、この場においてインドはグローバル・サウス(アジア、アフリカ、中南米などの新興国や発展途上国の総称)のリーダーを目指す姿勢を示しました。
これらは独立した出来事ですが、いずれの出来事も偉業といえるでしょう。我々は、これらの偉業の数々が相俟って、世界の政治・経済におけるインドの影響力が、いっそう大きくなっていることを、改めて感じています。
インド株式に注目すべき理由
こうした中、インドの株式市場の時価総額は2023年9月4日、過去最高となる約3.8兆米ドルに達しました。
インド株式のパフォーマンスは、これまで他の主要株式資産を上回るペースで上昇を続けてきました。
世界の政治・経済におけるインドの影響力の高まりに加えて、インド経済の成長力、インド企業の良好なファンダメンタルズ(基礎的条件)等を考慮すると、今後数年にわたって、インド株式は相対的に大きく上昇することが期待できるとみています。
「成長」の積み重ね
インド企業のファンダメンタルズについては、明るい見通しをもっています。
この背景の1つには、インド経済の高い成長性がありますが、それだけでなく、比較的安定して高成長が実現できている点も注目に値すると考えます。
インドの実質GDP(国内総生産)成長率の過去20年間(2002年~2022年、四半期ベース)の変動率をみると、世界の主要国・地域と比べて相対的に変動率が低く、安定して高成長を実現してきました。この背景には、インドは経済の集中度(経済活動が特定の産業や特定の企業などに集中している程度)が世界の主要国・地域に比べて低い(=より多様性がある)ことなどがあるとみています。インドでは、多様な産業分野が発展し、消費市場は大きく拡大しています。その中で、数多くのプレイヤーが活発に事業を展開しています。
インド経済の成長が、そのままインド企業の収益力につながるわけではありません。効率よく資本を活用し、コストを上回るリターンを生み出す「事業遂行能力」が必要です。
株主資本利益率(ROE)は、中長期的に優れた事業遂行能力を測る上で重要な指標の1つであると考えますが、インド企業の過去10年間(2013年8月末~2023年8月末)のROE実績をみると、インド企業はコロナ禍の時期を除いて、新興国企業の中でも相対的に高い水準を示してきました。
また、活発な情報技術・デジタル化投資は、インド企業のROEが今後さらに向上していくことに貢献するとみています。
インド政府の肝いりプロジェクトの1つである「インディア・スタック」は、政府・民間企業・開発者がデジタルデータを円滑に使えるようにするためのデジタル公共財やその仕組みです。これは、デジタルID「アドハー」をベースに、個人認証やデジタル送金などを実行できるAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)の集積体になります。この仕組みを利用することで、都市部だけでなく、農村部にいたるまで誰でもがシームレスにデジタル・サービスの利用が可能となるほか、ビジネス分野でもペーパーレス化や公共サービスのオンラインでの利用といった利便性・効率性の向上につながると期待されます。
デジタル化の進展は、全国的な金融包摂(経済活動に必要な金融サービスをすべての人々が利用できるようにする取り組み)の深化にもつながると期待されます。投資家にとって特に注目すべきは、スタートアップ企業などの小規模事業者が、事業拡大に向けた資金をより容易に確保できる可能性が高まるという点でしょう。インドの産業界では中小企業が多くを占めており、インドのGDPの30%程度を創出していると推定されていますが、こうした中小企業の大部分は銀行からの借入れなどに簡単にはアクセスできないのが現状です。
インドにおけるデジタル・エコノミーは第5世代移動通信システム(5G)の拡大により、さらに拡大することが予想されており、2030年までに1兆米ドル(足元から約6倍)に達するとの調査結果もあります。
また、インドは即時デジタル決済分野において、世界的にも高い取引量を誇っており、インド当局の発表によると、2022年の世界の即時デジタル決済取引量のうち約46%を占めたとされています。
インドは引き続き、デジタル・エコノミー分野において世界をリードする存在でありつづけ、その恩恵はインドの様々な産業分野の発展に寄与するものと予想しています。
インド企業はより効率的に、そして競争力も増していくと期待
デジタル化の流れの中で、これまでオフラインで非常に細分化された形ですすめられてきた多くのビジネスが、統合化されたウェブ・ベースのプラットフォームで実行されるようになり、事業の効率化が高まっている産業・企業も散見されます。特に足元では、トラベル関連、フード関連、ヘルスケア関連、さらには製造業などでこうした動きが顕著です。
また、インドの国際的な競争力は、緩やかではあるものの、高まりつつあります。インド政府は近年、製造業の高度化に力を入れていますが、高付加価値製品の輸出は増加傾向にあり、今後も増加していくことが予想されています。
さらに、インド企業におけるガバナンスの改善にも注目しています。インド当局は、企業の説明責任や透明性の向上、さらには少数株主の利益を守るための規制などを導入しており、多くの企業でガバナンスの改善がみられつつあります。ガバナンスの改善により、投資対象としての魅力は高まるものと考えています。
今後も市場寄りの政策が期待される
インフラ整備や、製造業の振興策、税制改革などモディ政権はこれまでに多くの改革を実行し、さらなる経済成長に向けた礎を築いてきました。
すべての政策がスムーズに実施にされたわけではありません。2016年の高額紙幣廃止を例にとってみると、モディ首相が高額紙幣廃止を発表した後、日付が変わった4時間後から対象となった高額紙幣が廃止されたために、インド社会は大きな混乱に陥りました。しかし、近年の政策動向をみると、社会や経済に大きな混乱を引き起こすようなことはなく、より安定的に経済成長を支える姿勢がみられています。
金融市場に対して友好的な政策動向は、財政・金融政策の透明性や信頼性の向上にもつながっています。こうした点は、外的ショックに対するインド経済の耐性を高めることに寄与していると考えます。
我々は、インドの政策は、今後も金融市場に対して友好的なものが続くと予想しています。特に足元では、来年2024年には総選挙を控えており、モディ政権は政策的な混乱を避けたいと考えてるとみています。
さらに、インドの外交政策の基本である「非同盟」は、今日のように地政学リスクが高まるなかで、インドの立場を優位なものにする可能性もあるとみています。インドの外交的な優位性は、特に、戦略的に重要なエネルギー、防衛、情報技術、医薬品などの分野の発展を促進させる可能性があります。
ここ最近では、米アップルが、iPhone15(2023年9月発売予定)をインド国内工場(受託先:鴻海精密工業(台湾))で量産を開始しました。これまで「世界の工場」として大きな役割を果たしてきた中国では、コロナ禍、そしてその後の経済活動再開でサプライチェーン(供給網)の混乱が発生し、さらに米中関係の緊迫化という事態にも直面しています。そのため、米アップルをはじめ多くの海外企業が中国以外の国で、製造拠点を拡大させる動きをみせつつあります。
こうした流れの中で、インドも製造拠点の移転先として注目が高まっています。
モディ政権は2014年から「メイク・イン・インディア」を掲げ、製造業振興を図ってきました。投資環境の整備を通じて、直接投資誘致を促進し、GDPに占める製造業の割合を15%から25%に引き上げる目標を掲げています。それにより、新たな雇用創出、貿易赤字縮小、輸出拡大などを目指しています。
インド政府はこの方針の下、国内製造業保護と高付加価値の部品の国産化を推進するほか、インド国内に進出する外資企業に対しては、多くの分野を開放(例:保険会社や防衛関連企業の外資出資比率50%以上を容認(2020年))し、投資を積極的に誘致しています。特に、製造業に対しては、法人税の引き下げや国内生産を促す生産連動型奨励金(PLI)スキームといった優遇策を導入しており、海外企業の製造拠点の移転先としての魅力が増しています。
インドはこれまで、ITサービス分野で世界的な強みをもっており、ビジネス・プロセス・アウトソーシング先として「世界のバック・オフィス」とも呼ばれることがありました。今後は、「世界の工場」としての可能性も大いに秘めているとみています。
世界の株式市場におけるインド株式の存在感は、高まることが必然と考える
2023年年初来、インド株式市場への海外投資家からの資金流入は拡大が続いています。
一方、例えば世界株式の代表的な株価指数であるMSCI全世界株価指数の国別構成比率をみると、インド株式の比率(2023年8月末時点で全体の2%)は依然として低位にとどまっています。
また、新興国株式の代表的な株価指数であるMSCI新興国株価指数の国別構成比率をみると、インド株式はこのうちの15%(2023年8月末時点)を占めていますが、足元の海外機関投資家のポートフォリオにおけるインド株式の保有ポジション(ネット)は、これを下回る水準であるとみられています。
世界の政治・経済におけるインドの影響力の高まりに加えて、インド経済の成長力、インド企業の良好なファンダメンタルズ等を考慮すると、世界の株式市場におけるインド株式の存在感は、高まって然るべきであると考えています。
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。
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