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- 短期的な市場変動や景気サイクルを乗り越えて、中長期的な投資スタンスで成長の果実を享受
●昨年9月以降、インド株式市場に変調がみられます。この背景には、インド国内の景気動向や金融市場全体の流れの変化など様々な要因がありますが、こうした流れは長期的なものではないと考えられます。
●中長期的にみれば、インドには相対的に高い成長力があるとの見方には、変わりはありません。長期的に成長の果実の獲得を目指す投資家にとっては、次なる上昇局面で株価が大きく反発することが期待できる優良銘柄への投資機会になる可能性があると考えます。
2024年9月以降、インド株式市場は変調
これまでインド株式は、相対的に高い成長期待を背景に、他の主要株式資産に比べて好パフォーマンスを示してきましたが2024年9月以降、変調がみられています。2024年年間では上昇に踏みとどまりましたが、2025年年初以降も、下落基調が続き、過去数年間続いてきた力強い上昇トレンドとは異なる市場環境となっています。この背景には、いくつかの要因があるとみられます。
変調の背景と、今後の見通し
1. 海外投資家の資金動向|当面、売り圧力が続く可能性も。国内投資家が一部を吸収すると期待
中国株式に向かう海外マネー
2024年9月末以降10月にかけて、中国当局が景気下支え策を相次いで発表したことを受けて、中国経済の回復期待が高まりました。中国株式のバリュエーション(投資価値評価)水準は、相対的に割安感が強かったこともあり、海外投資家がインド株式市場から投資資金を引き揚げ、中国株式に振り向ける動きを強めました。このため、2024年10月の海外投資家によるインド株式の売り越し額は、特に大きくなりました。その後はやや落ち着きをみせつつあるものの、2025年1月に中国の新興企業が低コスト生成AIを発表したことをきっかけに、海外投資家の関心は、再び中国株式へと向かっている模様です。
当面、売り圧力が続く可能性もあるが、いずれ投資資金は回帰するとみる
インド株式のバリュエーション水準は、これまで株価が大きく上昇してきただけに、過去平均や他の主要株式に比べて高水準にありました。このことも、海外投資家による利益確定の動きを誘引したと考えられます。
足元の予想株価収益率(PER)は、昨今の株価下落を受けて低下傾向にあるものの、依然として過去10年の平均を上回る水準にあります。バリュエーション水準の観点からは、当面、海外投資家の売り圧力が続く可能性もあるとみられます。
しかし、中長期的にみれば、インドには相対的に高い成長力があるとの見方には、変わりがありません。足元に残る様々な懸念材料が解消していくなかで、いずれは海外投資家の投資資金が、インド株式市場に回帰すると考えられます。
投資意欲旺盛なインドの個人投資家の存在が、海外投資家の売り圧力の一部を吸収
一方、インドの国内投資家に目を向けてみると、買い越し傾向が続いています。特に、インドの個人投資家による投信積立制度「SIP」を活用した投資資金が拡大傾向にあります。「SIP」を通じた2025年1月の月間資金流入は、2,640億ルピー(約4,720億円)と2024年12月(2,650億ルピー(約4,737億円))に記録したピーク水準にほぼ匹敵しています。存在感を増す国内投資家が、海外投資家による売り圧力の一部を吸収するものと期待されます。
なお、1月は2016年のSIP制度開始以来、初めて新規口座開設数よりも、停止口座数が上回る動きがみられたこともあり、今後の動向については、しっかりと注視していく必要はあるでしょう。
※上記本文中の円換算は2025年1月末時点の為替レートで概算
2. 景気動向|景気下支え策の効果に期待
インド経済は、相対的に高い成長が予想されていることには変わりありませんが、足元で減速感がみられます。こうした背景には、インフレ懸念から実質金利を大幅なプラスとする高金利政策などがあったとみられます。
今後は景気下支え策の効果などにより、いずれかの時点で景気は底打ちし、回復に向かうと期待されます。
政策効果期待①:インド中銀による利下げ
これ対して、インド準備銀行(中銀)は2025年2月7日、政策金利を6.50%から6.25%に引き下げることを発表しました。2020年以来、ほぼ5年ぶりの利下げとなり、景気を下支える姿勢を示したかたちです。インド中銀は当面、インフレの再加速やルピー安懸念に配慮しながら、利下げを継続することで景気を下支えていくものとみられます。
政策効果期待➁:所得減税やインフラ投資などの財政出動
また、2025年2月1日に発表された2025年度の連邦政府予算案では、財政出動により成長を下支えする姿勢が示されました。
同予算案では、財政赤字を対GDP比4.4%と、2024年度(同4.8%)から縮小させ、財政健全化路線を維持する一方、歳出総額は前年度比+5%の50兆6,534億ルピー(約90.5兆円)とし、中間所得層を支援する所得減税やインフラ投資が盛り込まれました。
※上記本文中の円換算は2025年1月末時点の為替レートで概算
3.企業業績|景気浮揚を受けて、今後は好転が予想される
景気減速などを背景に、インド企業の直近決算では、市場予想に届かない内容の発表も多く、投資家の失望を誘いました。インド企業の利益成長率予想の推移をみても、下方修正傾向が続き、投資家のインド企業の成長性に対する見方が厳しくなっていったことがうかがえます。
今後、政策効果により景気が浮揚すれば、企業業績動向にもプラスになると考えられます。なお、インド企業は、足元でも引き続き相対的に高い利益成長率が予想されています。
今後のリスク要因|トランプ関税を巡る問題
今後、米トランプ政権による関税を巡る問題が、先行き不透明感を強める新たなリスクとなる懸念があります。2025年2月13日に行われたモディ首相とトランプ大統領の会談後の共同声明では、インドと米国の関係を深めることを強調し、2030年までに2国間貿易を5,000億ドル(約77兆6,000億円)に倍増させる目標が示されました。しかし、インドは主要国の中でも関税率が高く、米国との差が大きいため、これをトランプ政権が問題視する可能性が残ります。米トランプ政権の通商政策の動向には、今後も十分に注視していく必要があるでしょう。
※上記本文中の円換算は2025年1月末時点の為替レートで概算
運用チームの考え方|中長期的な投資スタンスで、成長の果実を享受
当ファンドの運用チームでは、今後4~5年のインド企業の利益について、10%超(年率)の成長が引き続き期待できると予想しています。比較的健全なバランスシートを有している企業が多く、それを活用して成長のための投資を増加させることも可能です。また、民間設備投資サイクルの好転などの短期的な支援材料のほか、中間所得層の拡大による消費傾向の変化(食品などの生活必需品にとどまらず、耐久消費財やレジャー需要の拡大)といった中長期的な構造変化が追い風となり、インド企業は、引き続き相対的に高い利益成長を実現することが可能であるとみています。
特に、インドの個人消費関連分野に注目しています。消費意欲旺盛な中間所得層は2021年(約4.3億人)と比べて、2047年には約10億人への倍増することが予想注されています。消費市場の拡大ポテンシャルは大きいとみています。加えて、2025年度の連邦政府予算案で示された所得減税により、中間所得層の可処分所得を増やし、足元の消費を促す効果が期待できるとみられます。
注:中間所得層は、年間世帯所得50万ルピー以上300万ルピー未満。年間世帯所得は、2021年の物価水準基準。中間所得層の定義および予想はすべてPRICE ICE 360°Surveyによる。出所:Rajesh Shukla (2022)“The Rise of India’s Middle Class”、Price (https://www.price360.in/publication-details.php?url=india-is-growing-immensely-wealthy)
当面は、値動きの大きな展開が続くことが予想されますが、こうした相場状況は、次なる上昇局面で株価が大きく反発することが期待できる優良銘柄への良好な投資機会になる可能性もあります。
運用に際しては、中長期的に持続的な成長が期待できる産業分野に焦点を絞り、そのなかで優良銘柄を厳選した上で投資を行うことを一貫して継続していく方針です。短期的な市場変動や景気サイクルを乗り越えて、中長期的に好リターンを実現することを目指してまいります。
【ご参考】インドルピーについて|経済のファンダメンタルズが下支えに
足元でインドルピーは対米ドルで下落基調が続いていますが、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は、過去のルピー急落局面に比べて改善しており、これが下支え材料の1つになるとみられます。
(過去のインドルピー急落局面の例)
2013年に米連邦準備制度理事会(FRB)が量的金融緩和の縮小を示唆した際には、世界の金融市場は大きく動揺し、特に経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)がぜい弱とみられたインドなどの新興国市場から資金を引き揚げる動きが強まりました。
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