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- 運用の振り返りと市場のポイント
●2023年4月~6月のピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型)(以下当ファンド)の基準価額は金融不安の後退や良好な経済指標の発表などを背景に世界の株式市場が上昇するなか、堅調に推移。
●「グリーンシフト」を目指す公益企業は中長期的な成長が期待され、株価の調整は中長期的な投資機会になるとみる。
■ パフォーマンスの変動要因
【2022年7月~2023年6月(過去1年間)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄はPG&E(米国、電力)、RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)、SSE(英国、電力)、ナショナル・グリッド(英国、総合公益事業)、エーオン(ドイツ、総合公益事業)、などでした。
PG&Eは、2020年の山火事賠償責任に関する和解が成立したことや、送電線の地中化計画のために連邦融資を申請したこと、カリフォルニア州議会での原子力施設の稼働を延長する法案が可決したことなどを背景に上昇しました。SSE、ナショナル・グリッドは、電力供給を確保するための発電容量の市場取引価格が過去最高値をつけたことなどがプラスに寄与しました。RWEは、低コストの再生可能エネルギー発電への移行や、再生可能エネルギー事業の買収による成長期待などが上昇要因となりました。エーオンは、良好な業績や財務指標の改善、設備投資の拡大などがプラスに寄与しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、ドミニオン・エナジー(米国、総合公益事業)やクラウン・キャッスル・インターナショナル(米国、エクイティ不動産投資信託(REIT))、などでした。 ドミニオン・エナジーは太陽光発電の設備投資計画が資材の供給問題により遅れるとの懸念などを背景に、下落率が大きくなりました。クラウン・キャッスル・インターナショナルは、電波塔事業拡大の遅れや一時的なコストの発生などを背景に、来期会社計画が市場予想を下回ったことなどが下落要因となりました。
【2023年4月~6月(過去3ヵ月)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、 PG&E、RWE、オーステッド(デンマーク、電力)などでした。 PG&Eは、2020年の山火事賠償責任に関する和解が成立したことや、送電線の地中化計画のために連邦融資を申請したことなどを背景に上昇しました。RWEは、天候や電力需要の変化に対応できるフレキシブル発電の事業価値などが評価され、上昇しました。オーステッドは、欧州における電力価格の高騰への対策で、超過利潤課税が課されるなどの懸念などを背景に株価が低調に推移していましたが、当期はエネルギー価格が低下したことなどから上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、ネクステラ・エナジー(米国、電力)などでした。ネクステラ・エナジーは、利益成長見通しを背景に上昇していましたが、利益確定の売りにさらされました。
■ 2023年4月~6月(過去3ヵ月)の投資行動
当該期間の売買では、株価の調整を機に、少数株主持分の売却を発表した米国の電力銘柄や中期的な見通しの改善が期待できるとみている米国の総合公益事業銘柄などの組入比率を引き上げました。また、「グリーンシフト」による成長期待が大きい、SSEの組入比率を引き上げました。加えて、山火事に対する安全基準の厳格化を続けていることを評価し、PG&Eの組入比率を引き上げました。一方、株価が上昇したイベルドローラ(スペイン、電力)や米国の水道銘柄などの利益を一部確定し、組入比率を引き下げました。
■ 今後の見通し、運用方針
経済活動の正常化の進展による景気回復期待が高まる一方、物価の高止まりや欧米の利上げの継続、米地銀の破綻懸念などを背景に、企業業績やマクロ経済見通し、金融政策などに対する不透明感が高まっています。
こうしたなか、公益企業は、発電施設などの長期的に運営される設備に投資し、日常に必要不可欠なサービスを提供することで、収益を拡大しており、短期的なマクロ経済の変動の影響を受けにくくなっています。このため、公益企業の成長の見通しは良好です。こうした経済や金融市場の先行き不透明感が高まるなか、株価の調整は公益株式の中長期的な投資機会を提供する可能性があると考えます。
当ファンドでは、クリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。また、米国の規制下事業の比率の高い銘柄は、規制環境が良好で、収益見通しが安定していることから、組入れを高位にしています。
■ 中長期保有に当たってのポイント
中長期的には世界的に電力などの需要拡大が予想されており、公益セクターの事業環境は良好との見方には変わりありません。
ウクライナ危機をきっかけとしたエネルギー安全保障問題などを背景に、主要国・地域の脱炭素化に向けた政策強化の動きが進展しています。米国ではインフレ抑制法(IRA)、欧州では、Fit for 55 (温室効果ガス削減政策)やリパワーEUなどの「グリーンシフト」を促す政策が施行されています。これらの動きは、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギー発電の拡大やこれらの発電を支えるための送電網の拡大を後押しするとみられます。
当ファンドでは、公益企業のESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みを重視し、公益企業にエンゲージメント(対話)を行い、クリーンエネルギーシフトを促していきます。主要国・地域のクリーンエネルギー政策強化の動きは、「グリーンシフト」を目指す公益企業の株式にプラスになるものと期待されます。
■ 相対的に割安な世界公益株式の株価収益率(PER)
世界公益企業の業績は底堅い一方、過去数ヵ月間は成長株などが注目され、相対的に株価が低調だった影響で、世界公益株式のPERは、直近では世界株式よりも低くなっています。バリュエーション(投資価値評価)面でみると、現在の局面は、中長期的にみて投資機会であるとも考えられます。
■ 世界公益企業の利益見通しは相対的に良好
世界公益企業の業績は、2020年から2022年はコロナ禍にあっても、事業が日常に必要不可欠であることから、他の業種と比べて変動が小さくなりました。同期間、サプライチェーン問題に加え、ロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけ、エネルギー価格が急騰し、その後大きく下落しました。規制下の事業では、エネルギー価格の高騰は電力価格に反映されるため、利益に大きな影響がない収益構造となっていますが、今回の高騰に対しては政治圧力もあり、利益を抑える要因となりました。非規制下事業は、電力の販売価格は長期契約が多く、発電の燃料の調達なども長期契約やヘッジを行っていることから、大きな影響はありませんでした。ただし、電力価格の高騰で需要や発電量が抑制されたため、収益のマイナス要因となりました。
2023年は、エネルギー価格が高値から大きく下落しており、1)需要や発電量の回復が期待されること、2)政治圧力がかからないと予想されること、3)大口顧客が電力価格の更なる高騰リスクを懸念し2023年から2024年にかけて比較的高い価格で電力購入契約を結んでいること、4)政策の後押しも伴い、「グリーンシフト」によりコスト効率の高いクリーンエネルギーによる発電が増加することなどから、増収増益が予想されています。
■ (ご参考)公益企業の2023年の増益要因(詳細)
【電力価格】
欧州の非規制下の公益事業では、多くの企業が3年先の電力販売価格をある程度ヘッジしています(例えば、1年先90%、2年先60%、3年先30%など)。2022年は、エネルギー価格の高騰により、2023年と2024年の電力販売価格を高値でヘッジし、固定することができました。主要発電源でもある天然ガスの価格は2022年以前の水準に戻りましたが、二酸化炭素排出権価格の上昇などにより、現在、欧州の電力価格はスポット価格、ヘッジ価格共に、高い収益性が維持できる水準となっています。電力の大口顧客は、2023年の電力価格の変動と電力不足のリスクを懸念し、例年よりも長い期間、かつ高い価格で電力購入契約(PPA)を締結しています。電力価格が高水準で推移する一方、再生可能エネルギー発電のコストは比較的安定しているため、特にクリーンエネルギー事業に強みをもつ公益企業中心に増収増益が予想されます。
【マクロ】
一部の公益事業会社は消費者物価指数(CPI)または卸売物価指数(PPI)に連動した電力料金設定を行うビジネスモデルを持っています。ナショナルグリッド(英国、総合公益事業)、テルナ(イタリア、電力)、SSE(英国、電力)など、欧州の電力供給事業を行う公益企業などがこれにあたります。世界的に物価上昇率が高い水準となっていますが、特に英国では、公益企業の収益拡大の原動力となっています。
【グリーンシフトの加速】
電力業界では、グリーンシフトの加速により設備投資が増加し始めています。規制下事業では、発電施設などの資産価値に対して、一定の利益率を乗じて、利益を確保したうえで、燃料や減価償却費などの必要コストを上乗せして、電力料金が設定されます。このため、公益事業では、設備投資の増加は、増益要因となります。サプライチェーンの混乱や許認可が再生可能エネルギープロジェクト開発のボトルネックとなっていましたが、プロジェクトが再稼働し、収益の伸びをけん引しています。米国インフレ抑制法(IRA)施行による、クリーンエネルギー関連の税額控除の2023年からの適用など、政策の後押しも、増益要因となると期待されます。
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