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- グロイン1年 | 運用の振り返りと市場のポイント
● 2022年4月~6月の当ファンドの基準価額は上昇
● 公益株式のインフレ耐性やディフェンシブ性を背景に底堅く推移
● 引き続き「グリーンシフト」を目指す公益企業は中長期的な成長が期待される
■ 当ファンドのパフォーマンス~ウクライナ侵攻と資源価格高騰で公益株式のインフレ耐性やディフェンシブ性が注目される
■ パフォーマンスの変動要因
【2021年7月~2022年6月(過去1年間)】
当該期間でパフォーマンスにプラス寄与度の大きかった主な銘柄はCMSエナジー(米国、総合公益事業)、センプラ・エナジー(米国、総合公益事業)、SSE(英国、電力)、ナショナル・グリッド(英国、総合公益事業)、RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)などでした。CMSエナジーは市場予想を上回る決算などを背景に上昇しました。センプラ・エナジーは新たな長期利益成長見通しの発表が好感されたことや自社株買いの発表などを背景に上昇しました。SSEやナショナル・グリッドは英国の物価に連動して認可される電力料金体系による増益期待などを背景に上昇しました。RWEはドイツの新連立政権が再生可能エネルギーによる発電の増強など、積極的なエネルギー政策を発表したことなどがプラスとなりました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄はオーステッド(デンマーク、電力)、イベルドローラ(スペイン、電力)、イタリア電力公社(イタリア、電力)などでした。 オーステッドは、洋上風力発電事業の競争激化懸念や設備投資関連資材の高騰や供給問題などが株価にマイナスとなりました。イベルドローラは、スペイン政府が水力や風力発電などから得られる利益に対して棚ぼた利益税を導入したことなどがマイナス要因となりました。イタリア電力公社も、スペインの事業への影響が懸念されたことから下落率が大きくなりました。
【2022年4月~6月(過去3ヵ月)】
当該期間でパフォーマンスにプラス寄与度の大きかった主な銘柄はWECエナジー・グループ(米国、総合公益事業)、RWEなどでした。WECエナジー・グループは四半期の業績が市場予想を上回り、2022年の通期利益見通しが期初の会社発表の上限に達する可能性を示唆したことなどが上昇要因となりました。RWEは電力価格が上昇する中、低コストの再生可能エネルギー発電への移行や再生可能エネルギー事業の買収による成長期待などを背景に上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、PG&E(米国、電力)、オーステッドなどでした。PG&Eは夏に向けて山火事のリスクへの警戒感などから一時利益確定の売りにさらされたことなどが、オーステッドは再生可能エネルギー発電の設備投資計画が資材の供給問題を背景に遅れるとの懸念などがマイナス要因となりました。
■ 2022年4月~6月(過去3ヵ月)の投資行動
当該期間の売買では、フォータム(フィンランド、電力)の組入比率を引き上げました。ロシア・ウクライナ情勢悪化による天然ガス供給問題をきっかけに、脱炭素化が更に加速し、主力の再生可能エネルギー事業が今後恩恵を受けるとみています。また、中東では、石油依存から脱却するため他の産業育成を進めており、同地域の規制下の電力銘柄の組入比率を引き上げました。一方、英国の公益事業が物価上昇を反映し易い規制体系であることを背景に株価が上昇していたSSE(英国、電力)などをはじめとした英国で事業を行う電力銘柄のうち一部を売却、利益を確定し、組入比率を引き下げました。株価が上昇した米国の電力及び総合公益事業銘柄などを利益確定のため一部売却しました。
■ 今後の見通し、運用方針
世界的に物価が上昇し、主力の発電燃料である天然ガスの価格や電力の市場価格も上昇しています。また、ウクライナ危機は天然ガス価格の更なる上昇要因となっています。こうした環境下では、電力価格は上昇するものの、クリーンエネルギーによる発電コストは変わらないため、クリーンエネルギー発電中心の発電事業者にとって、天然ガス価格の上昇は利益増加要因となります。一部の国では電力価格上昇に対して政治圧力がかかるリスクがあるため、その可能性の少ない国や事業地域の銘柄への投資を行っていく方針です。ウクライナ危機を受けて将来的にロシアの天然ガスに依存したくないという欧州諸国の意向は、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギーの拡大を更に加速させることにつながるでしょう。英国やドイツなどでは既にクリーンエネルギーへの移行が進んでおり、そうした中でもクリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。
世界的なインフレの高進に伴い、金利も上昇傾向にある中、金利の急上昇には注意が必要です。ただし、金利上昇時は物価上昇を伴う局面であることが多く、過去の実績では物価が上昇する中、タイムラグをおいて電力価格が上昇し、公益企業の収益が増加する傾向がみられ、公益企業の株価の上昇要因となり、金利上昇局面では、期間を通しては世界公益株式は上昇しました。
公益セクターは引き続き業績の実績や見通しが相対的に安定しています。このため、長期金利の急上昇などによる株価の調整は中長期的な投資機会を提供する可能性があると考えます。
■ 中長期保有に当たってのポイント
中長期的には世界的に電力などの需要拡大が予想されており、公益セクターの事業環境は良好との見方には変わりありません。当ファンドでは、公益企業のESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みを重視し、公益企業にエンゲージメント(対話)を行い、クリーンエネルギーシフトを促していきます。主要国・地域のクリーンエネルギー政策強化の動きは、「グリーンシフト」を目指す公益企業の株式にプラスになるものと期待されます。
■ 今後のポイント:長期金利の急上昇局面では注意が必要だが、中長期的には 投資機会を提供している可能性
長期金利の急上昇局面では、配当利回りが高い株式や金利負担の大きい企業の株式などが下落する傾向がみられ、注意が必要です。ただし、過去の実績では、金利急上昇による株価の調整はその後の長期金利の落ち着きとともに、比較的、短期間で終わったことが多く(下図参照)、金利急上昇による株価の調整は、中長期的には投資機会を提供している可能性があると考えることもできます。
公益株式はディフェンシブ性(景気の変動に左右されにくい特性)が強く、株式の中でも配当利回りが高い傾向があることから、債券の代替としての投資対象となる場合があります。このため、債券利回りが上昇すると、公益株式の配当利回りの魅力が相対的に低下します。金利の上昇は企業の将来の利益や配当の割引現在価値の低下要因にもなります。また、公益企業は他の業種に比べて設備投資が多く、負債比率が高いことから将来の利払いや資金調達への悪影響が想定されます。金利が急上昇する局面ではこれらの点が投資判断に影響を与えるため、株価の調整が一気に起こると考えられます。実際、過去の実績では米国10年国債利回りが急上昇した際には、短期的に世界公益株式が下落する傾向がみられました(下図参照)。
一方、金利上昇局面では、物価が上昇していることが多く、燃料費なども上昇している傾向にあります。また、利払い負担も増加します。しかし、規制下の公益事業では、通常、こうしたコストの上昇はタイムラグをおいて電力、ガス、水道などの公共料金に価格転嫁することになります。これらのサービスは日常に不可欠なことから、他の業種と比べて価格転嫁が容易です。また、米国では規制下の電力料金は長期金利の水準が料金決定基準の収益率のベースとなっています。このため、金利上昇はタイムラグをおいて公益企業の収益にプラス要因となると考えられます。実際、中長期でみると、金利が上昇する局面では世界公益株式は上昇しています(下図参照) 。
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