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- クアトロ|今、確認しておきたいこと
<ポイント>
● 下落局面で耐え切れずに売却してしまうと、その後の相場の戻りを取り損ねてしまうことも
● 当面は、株式への過度な資産配分は避け、分散されたポートフォリオで一定の下値耐性を確保することが重要
● 金融引き締め局面ではクアトロのような分散投資を徹底したファンドでも苦戦するケースも
クアトロの年初来騰落率は-6.1%、金融引き締め下で苦しむも直近はやや持ち直し
クアトロの2022年8月19日の基準価額は11,708円となりました(図表1)。2022年の基準価額の推移を簡単に振り返ると、1月5日に年初来高値12,495円を記録した後、6月17日に年初来安値11,440円を記録するまでの間、3月に一時持ち直す動きはあったものの、概ね下落基調となりました。一方、6月下旬以降は上昇基調に転じており、8月19日時点の年初来騰落率は-6.1%となっています。
図表1:基準価額の推移
日次、期間:2013年12月12日(設定日)~2022年8月19日
ピンクの網掛け部分は2022年
※基準価額は1万口当たりで表示
※基準価額は信託報酬等控除後
2022年は主要中央銀行による金融引き締めが進むなか、幅広いアセットクラスが価格下落に見舞われており、クアトロにとっても分散投資の効果が発揮されにくい厳しい局面が続いています。
以下では、金融政策を巡る環境を振り返りつつ、クアトロが苦戦しがちな局面の傾向などをみていきます。
インフレ高進を受け、金融引き締めに追われる主要中央銀行
世界的なインフレの高進(図表2)とそれに対する米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとした主要中央銀行による金融引き締めの動きがあり、金融市場は、大規模な金融緩和によって支えられたこれまでとは異なる状況に直面しています。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化していることや、中国で実施された都市封鎖の影響などが世界的なインフレの高進と経済の減速に拍車をかける格好となっています。
図表2:日本、米国、ユーロ圏の消費者物価指数(前年同月比)の推移
月次、期間:1998年12月~2022年7月
グラフ右端数値は2022年7月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
一般に、金融引き締めが行われ、金利が上昇すると、債券価格は下落し、また株価収益率(PER)などのバリュエーション(投資価値評価)の調整を通じて株価も下落する傾向があります。FRBが利上げを開始したのは3月ですが、これに先んじて金融市場では、FRBの金融引き締め転換が織り込まれ、年初から債券と株式がともに弱含む流れとなりました。また、金融引き締めが景気実態に波及するまでには1年前後の遅れが生じると言われており、今後見込まれる景気減速ないしは景気後退が株価の重しとなっています。
なお、インフレによる資産価値の実質的な目減りを打ち返す必要性という観点からは、他のアセットクラスに比べて相対的に高いリターンを上げる傾向にある株式への投資が重要です。一方で、金融引き締めの結果としての企業業績の悪化は今後顕在化する公算で、当面は、株式への過度な資産配分は避け、分散されたポートフォリオで一定の下値耐性を確保することが重要であると考えられます。
幅広いアセットクラスが価格下落に見舞われる局面では、分散投資を徹底するクアトロであっても苦戦を強いられることがある
「分散投資を行えば低リスクで着実にリターンを上げることができる」、というのは常に成立する命題ではなく、リーマン・ショック時やコロナ・ショック時のような一般に危機と称されるような局面や、FRBをはじめとした主要中央銀行が金融引き締めに踏み切るような局面では、幅広いアセットクラスが価格下落に見舞われ、クアトロのように分散投資を徹底したファンドでも苦戦を強いられることがあります。
クアトロの基準価額と主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率の推移、と題した図表3はこうした状況を示しています。
図表3:クアトロの基準価額と主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率の推移
週次、期間:2013年12月13日~2022年8月19日
クアトロの基準価額は円ベース、主要アセットクラスの52週前比リターンは全て米ドルベース
ピンクの網掛け部分は主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率が20%を下回った期間
※基準価額は1万口当たりで表示
※基準価額は信託報酬等控除後
※主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率は、以下のアセットクラスの米ドルベースの52週前比リターンがプラスとなったものの比率
※世界国債:FTSE世界国債指数、米国国債:FTSE米国国債指数、日本国債:FTSE日本国債指数、ユーロ国債:JPモルガンGBIユーロ国債指数、新興国国債(米ドル建て):JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数、新興国国債(現地通貨建て):JPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイド・コンポジット指数、米国投資適格社債:FTSE米国投資適格社債指数、米国ハイイールド債券:FTSE米国ハイイールド債券指数、米国モーゲージ証券:FTSE米国モーゲージ証券指数、新興国社債:JPモルガンCEMBIブロード・ディバーシファイド指数、先進国株式:MSCI世界株価指数、米国株式:S&P500種株価指数、日本株式:TOPIX、欧州株式:MSCI欧州先進国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、米国グロース株式:ナスダック総合指数、世界公益株式:MSCI世界公益株価指数、世界リート:S&PグローバルREIT指数、日本リート:S&P日本REIT指数、商品:S&PGSCI商品指数、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドル、金スポット価格
※為替および金スポット価格を除きトータル・リターン・ベース
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
設定来で幾度か厳しい局面を経験してきたクアトロですが、いずれも幅広いアセットクラスが価格下落に見舞われ、分散効果が発揮されにくい局面でした。
具体的には以下のような局面が挙げられます。
①2015年半ば~2016年始め(円高、米国の利上げ、中国の景気懸念および外貨準備取崩しなど)
②2018年10-12月(米中貿易戦争、米国の金融引き締めなど)
③2020年3月(コロナ・ショック)
④2022年(主要中央銀行の金融引き締めなど)
大幅調整局面では我慢も必要
図表4は先進国株式および米国投資適格社債の価格と主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率の推移で、過去は、大きな調整に見舞われてもその後に相場が戻してきたことを示しています。
図表4:先進国株式および米国投資適格社債の価格と主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率の推移
週次、期間:2004年12月24日~2022年8月19日
米ドルベース、先進国株式および米国投資適格社債は2004年12月24日=100として指数化
ピンクの網掛け部分は主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率が20%を下回った期間
※主要アセットクラスの52週前比プラスリターン比率は、以下のアセットクラスの米ドルベースの52週前比リターンがプラスとなったものの比率
※世界国債:FTSE世界国債指数、米国国債:FTSE米国国債指数、日本国債:FTSE日本国債指数、ユーロ国債:JPモルガンGBIユーロ国債指数、新興国国債(米ドル建て):JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数、新興国国債(現地通貨建て):JPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイド・コンポジット指数、米国投資適格社債:FTSE米国投資適格社債指数、米国ハイイールド債券:FTSE米国ハイイールド債券指数、米国モーゲージ証券:FTSE米国モーゲージ証券指数、新興国社債:JPモルガンCEMBIブロード・ディバーシファイド指数、先進国株式:MSCI世界株価指数、米国株式:S&P500種株価指数、日本株式:TOPIX、欧州株式:MSCI欧州先進国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、米国グロース株式:ナスダック総合指数、世界公益株式:MSCI世界公益株価指数、世界リート:S&PグローバルREIT指数、日本リート:S&P日本REIT指数、商品:S&PGSCI商品指数、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドル、金スポット価格
※為替および金スポット価格を除きトータル・リターン・ベース
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
先々の先進国株式や米国投資適格社債の価格推移を予想するのは本稿のテーマではなく、また困難を極めますが、世界経済が平時に一定の成長性を保つ前提に立てば、相応の価格調整を経た後に、これらが右肩上がりの中長期の傾向線上に回帰すると考えることには一定の合理性があると思われます。
一般に、相場に大きなショックが加わった際には、ポートフォリオのリスク低減の観点から、あらゆるアセットクラスが一気に現金化される傾向があります。その際、流動性の低いアセットは現金化のコストが高くなりがちです。市場参加者がポートフォリオのリスク低減を進め、冷静さを取り戻せば、中長期的に有望と考えられるアセットを買い戻す動きや、過度に割安となったアセットを拾う動きが出てきます。
コロナ・ショック時などは顕著でしたが、下落局面で耐え切れずに売却してしまうと、その後の相場の戻りを取り損ねることになりかねないため、ある程度我慢してリスクを取り続けることも重要です。また、余裕資金があれば、下落局面で新規投資や追加投資を検討することも有益でしょう。
とは言え、どのタイミングで、何を買うべきか/売るべきか、という点について正しく見極め、実際に投資行動に移すことは極めて困難です。そのため、時間分散やポートフォリオ分散により、リスクを抑え、着実にリターンを獲得することを目指すのが有効であると考えられます。
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