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- クアトロを通じた分散投資のススメ~これまで以上に重要性が高まる「守り」の視点
● 長らく物価の停滞が続いた日本においても、インフレ率はプラス圏で定着しつつあり、実質ベースでの資産価値を守る視点を持つことの重要性がこれまで以上に高まっている。
● 資産価値を守るという意味では、インフレ率を上回るリターンを得ることに加え、ポートフォリオのリスク分散が重要。低リスク型のマルチ・アセット戦略であるクアトロは、徹底した分散投資および機動的な資産配分の変更により、設定来では価格変動リスクを日本国債や外国国債(ヘッジあり)と同程度に抑えつつ、これらを上回るリターンを上げてきた。
● インフレ率が高止まりし、債券市場の不安定な状況が続くなか、リスクを大きく取れない投資家層のコア資産として、債券代替ファンドであるクアトロが果たす役割は引き続き大きい。
これまで以上に重要性が高まる「守り」の視点
長らく物価の停滞が続いた日本においても、足元のインフレ率はプラス圏で定着しつつあります。こうしたなか、インフレ率を考慮した実質ベースでの資産価値を守る視点を持つことの重要性がこれまで以上に高まっています(図表1)。資産価値を守るという意味では、インフレ率を上回るリターンを得ることに加え、ポートフォリオのリスク分散が重要です。以下、日本のインフレ率および金融政策の動向を振り返った後、低リスク型のマルチ・アセット戦略であるクアトロを通じた分散投資の効用について考えます。
図表1:日本の消費者物価指数(前年同月比)の推移~日本の政策金利は実質ベースでマイナス圏にある
月次、期間:1990年1月~2024年3月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
賃金と物価の好循環の強まりを背景に、日本銀行は17年ぶりの利上げを実施
2024年3月19日、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを実施しました。その際、日本銀行は、 『最近のデータやヒアリング情報から、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、先行き、「展望レポート」の見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断。マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールなどの大規模な金融緩和は、その役割を果たしたと考えている。』と説明しています。
日本銀行による直近の「生活意識に関するアンケート調査」や「全国企業短期経済観測調査(短観)」の結果から消費者および企業のインフレ期待がしっかりしたものとなっていることが確認されたことや、2024年春闘の賃上げ*が昨年を上回るものとなっていることなどが前述の政策転換の背景にあります。
*日本労働組合総連合会(連合)が2024年4月18日に公表した2024年春闘の第4回回答集計結果によれば、平均賃上げ率は前年比5.20%となり、約30年ぶりの高い伸び率となった2023年の同3.58%(最終集計値)を上回る水準となっています。
日本銀行は2024年4月26日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定、追加利上げは見送りました。植田総裁は、同会合後の記者会見で、今後の金融政策運営について、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和の度合いを調整していくことになるものの、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている旨をコメントしました。追加利上げを見送った理由として植田総裁は、基調的な物価の上昇率が2%を下回っていることを挙げました。なお、金融市場は年内の追加利上げを織り込んでいるとみられますが、運用チームは年内の追加利上げに対しては慎重な見方を継続しています。
日本銀行が2024年4月26日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で示した政策委員による消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通し(前年度比、中央値)は、2024年度:+2.8%→2025年度:+1.9%→2026年度:+1.9%となっています。当該見通しの成否はさておき、賃金と物価の好循環の強まりを示す材料が揃うなか、インフレ率を考慮した実質ベースでの資産価値を守るうえでは、費用・税金等控除後で少なくとも年率2%程度のリターンを確保することが一つの目線になると考えられます。
(ご参考)金融市場が織り込む日本の期待インフレ率の推移
月次、期間:2013年12月末~2024年4月末
※期待インフレ率はブレーク・イーブン・インフレ率(10年)で、名目の10年国債利回りから物価連動国債(10年)の利回りを差し引いたもの。市場が織り込む向こう10年分の期待インフレ率の平均を表す。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
債券代替ファンドとしてクアトロが果たす役割は引き続き大きい
インフレ率がプラス圏で定着しつつあるなか、インフレ率を考慮した実質ベースでの資産価値を守る視点を持つことの重要性がこれまで以上に高まっています。資産価値を守るという意味では、インフレ率を上回るリターンを得ることに加え、ポートフォリオのリスク分散が重要です。
低リスク型のマルチ・アセット戦略であるクアトロは、徹底した分散投資および機動的な資産配分の変更により、設定来(2024年4月30日まで、以下同様)では価格変動リスクを日本国債や外国国債(ヘッジあり)と同程度に抑えつつ、これらを上回るリターンを上げており、債券代替ファンドとして一定の役割を果たしてきました(図表2)。
設定来の価格変動リスク(年率)は、クアトロが3.6%となったのに対し、世界国債(ヘッジあり)が3.8%、日本国債が3.1%、米国国債(ヘッジあり)が4.9%となり、過去の実績においてクアトロの価格変動リスクはこれら国債並みの低い水準となりました。一方、設定来のリターン(年率)は、クアトロが1.8%となったのに対し、世界国債(ヘッジあり)が-0.3%、日本国債が0.1%、米国国債(ヘッジあり)が-1.3%となりました。
図表2:クアトロおよび主要な資産のリスク・リターン比較
日次、円ベース、年率、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日、グラフ中の数字はリスク, リターン
※基準価額は信託報酬等控除後。換金時の費用・税金等は考慮しておりません。 ※世界国債(ヘッジあり):FTSE世界国債指数(円ヘッジ)、世界国債:FTSE世界国債指数(円換算)、日本国債:FTSE日本国債指数、米国国債(ヘッジあり):FTSE米国国債指数(円ヘッジ)、米国国債:FTSE米国国債指数(円換算)、米国ハイイールド債券:ICE BofA米国ハイイールド債券指数(円換算)、世界株式:MSCI全世界株価指数(円換算)、日本株式:TOPIX、日本リート:東証REIT指数、金:ロンドン市場金価格 ※指数はすべてトータル・リターン・ベース(金は除く) ※投資対象ファンドによって基準価額に反映する日が1-2日異なるため、比較指数は1営業日前ベースとしています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表3はクアトロと世界国債(ヘッジあり)、日本国債、米国国債(ヘッジあり)のパフォーマンス推移を示したものです。
設定来でみたクアトロのリターンがこれらの代表的な低リスク資産を上回るものとなったことは前述のとおりですが、特に、世界的にインフレ率が高止まりし、債券市場が不安定となっている直近においてクアトロのパフォーマンスが相対的にしっかりしたものとなっていることが確認できます。昨年11月以降、リスク資産の価格上昇トレンドが当面続くとの見方から、キャッシュ等の比率を極力抑え、市場の動きに対応したことが奏功しました。
ピクテでは、債券市場の不安定な状況が続くなか、リスクを大きく取れない投資家層のコア資産として、債券代替ファンドであるクアトロが果たす役割は引き続き大きいと考えます。
また、株式をポートフォリオの主軸とする投資家層にとっても、クアトロはポートフォリオのリスク調整の一つの手段になりうると考えます。長期的な資産形成において、長期投資から退出してしまうことは避けるべきでしょう。長期投資からの退出とは、具体的には、過度に慎重になってリスク資産の多くを現金化してしまうことや、定期的に訪れる金融市場の大幅下落局面で耐え切れずにリスク資産の多くを売却してしまうこと(その後の市場の回復局面を逸してしまうことがある)などです。これまで良好な投資環境が続いた内外の株式市場ですが、株式をポートフォリオの主軸としつつも先行きに警戒感を持つ投資家層にとって、長期投資からの退出を避けるための手段として、低リスク型のマルチ・アセット戦略であるクアトロに投資資金を配分することは有力な選択肢になると考えます。
以下では、クアトロを通じた分散投資の効用として、市場の値動きに対する感応度の低さを確認します。
図表3:クアトロと世界国債(ヘッジあり)、日本国債、米国国債(ヘッジあり)のパフォーマンスの推移
日次、円ベース、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日、右端数値は2024年4月30日時点
※基準価額は信託報酬等控除後。換金時の費用・税金等は考慮しておりません。 ※世界国債(ヘッジあり):FTSE世界国債指数(円ヘッジ)、日本国債:FTSE日本国債指数、米国国債(ヘッジあり):FTSE米国国債指数(円ヘッジ) ※指数はすべてトータル・リターン・ベース ※投資対象ファンドによって基準価額に反映する日が1-2日異なるため、比較指数は1営業日前ベースとしています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
クアトロを通じた分散投資の効用~「守り」につながる市場の値動きに対する感応度の低さ
ここではβ(ベータ)値についてみていきます。β(ベータ)値とは、個別の証券ないしはポートフォリオの値動きが証券市場全体の値動きに対してどの程度連動して変動するか(感応度)を示す指標です。例えば、クアトロの設定来でみた世界株式に対するβ(ベータ)値は、先進国株式が1.03、新興国株式が0.79となっています**。これは、過去の実績において、世界株式が10%上昇(下落)する際に、先進国株式が10.3%上昇(下落)し、新興国株式が7.9%上昇(下落)する傾向があったことを示します。ポートフォリオのリスク分散を図るうえでは、組入資産間の値動きの連動性を意識することが重要で、上の例のようにβ(ベータ)値が1に近いものを組合わせても得られるリスク分散効果は限定的なものとなります。
**円ベース、日次。世界株式:MSCI全世界株価指数(円換算)、先進国株式:MSCI世界株価指数(円換算)、新興国株式:MSCI新興国株価指数(円換算)。指数はすべてトータル・リターン・ベース。指数はすべて1営業日前ベース。
図表4にあるように、クアトロの主要資産および為替に対するβ(ベータ)値は押し並べて低い水準にあります。値動きが比較的大きくなる傾向がある株式や為替に対するβ(ベータ)値についても、過去の実績においては、0.1前後という低い水準となりました。
図表4:クアトロの主要資産および為替に対するβ(ベータ)値
円ベース、日次、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日
※基準価額は信託報酬等控除後。換金時の費用・税金等は考慮しておりません。 ※世界国債(ヘッジあり):FTSE世界国債指数(円ヘッジ)、世界国債:FTSE世界国債指数(円換算)、日本国債:FTSE日本国債指数、米国国債(ヘッジあり):FTSE米国国債指数(円ヘッジ)、米国国債:FTSE米国国債指数(円換算)、米国ハイイールド債券:ICE BofA米国ハイイールド債券指数(円換算)、世界株式:MSCI全世界株価指数(円換算)、日本株式:TOPIX、日本リート:東証REIT指数、金:ロンドン市場金価格 ※指数はすべてトータル・リターン・ベース(金、米ドル・円、ユーロ・円は除く) ※投資対象ファンドによって基準価額に反映する日が1-2日異なるため、比較指数は1営業日前ベースとしています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
これは、株式市場が大きく上昇する局面や大幅に円安が進行する局面でクアトロのパフォーマンスがこれら市場に対して相対的に出遅れた過去の実績と整合する一方で、今後、株式市場が大きく下落する局面や大幅に円高が進行する局面が到来した際に、クアトロのパフォーマンスがこれら市場に対して相対的に底堅いものになると期待されることを示唆しています。
市場動向やポートフォリオの組入状況、計測期間によっては、こうした傾向が短期的に大きく変わる可能性もありますが、クアトロのβ(ベータ)値の実績が押し並べて低いものとなったことは、これまで行ってきた徹底した分散投資が有効に機能したことの一つの証左であると考えます。
クアトロの運用における為替変動リスクの考え方
前段でクアトロの為替に対するβ(ベータ)値の実績が低位にとどまることを示しましたが、ここではその背景について確認します。クアトロは、円ベースでリスク管理を行っており、限られたリスクで効果的にリターンを生み出すため、為替へのリスク配分は全体のバランスをみつつ適切と考えられる水準にコントロールしています。為替は、価格変動リスクが比較的大きく(図表5)、ファンダメンタルズ(基礎的条件)から大きく乖離することもあるため、過去を振り返るとクアトロの円資産(円建て資産や円ヘッジの外貨建て資産)比率は月末ベースで70%~90%と高い水準で推移してきました(図表6)。結果として、前段でみたようなクアトロの為替に対するβ(ベータ)値の低さにつながっています。
クアトロは、為替変動リスクを低減するために為替ヘッジを積極的に活用しています。2024年3月末時点のクアトロのポートフォリオにおける為替ヘッジ比率(為替ヘッジした戦略への投資比率とクアトロで直接行う為替ヘッジ比率の合計)は約33%となっており、ファンド全体の為替ヘッジコスト(各通貨を総合したコスト)は年率で約1.6%***となっています。運用チームは、現時点では、円に対して中立的な見方をしており、当面は現状の為替ヘッジ比率を維持する方針です。
***上記のファンド全体の為替ヘッジコストは概算値。個々の為替予約取引に際して生じる為替ヘッジコストは市場実勢に即します。
図表5:クアトロと米ドル・円およびユーロ・円の価格変動リスクの比較
日次、年率、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日
※基準価額は信託報酬等控除後。換金時の費用・税金等は考慮しておりません。 ※米ドル・円、ユーロ・円は1営業日前ベースとしています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表6:円資産比率(概算値)の推移
月次、期間:2013年12月末~2024年3月末
※円資産比率は、当ファンドで保有しているコール・ローン等と、円建て資産の比率、為替予約の比率から計算した概算値です。円建て資産の比率は、各投資先ファンドで組入れている円建て資産の比率と各投資先ファンドの実質組入比率から算出しています。為替予約の比率は、当ファンドで直接行う為替予約の比率です。
なお、クアトロの運用における為替ヘッジに関する考え方は以下のとおりです。
クアトロは、グローバル債券投資に際しては、現地通貨建て新興国債券などの為替に注目した戦略を除けば、基本的に為替ヘッジを前提にポートフォリオを構築します。その際の判断材料として、各国の国債利回り(ロールダウン効果なども考慮)に加え、為替ヘッジコスト控除後の利回りなどにも注目しています。
一方、グローバル株式投資に際しては、まずは為替の影響は考慮せず、純粋に魅力的と思われる戦略をポートフォリオに組入れます。そのうえで、ポートフォリオ全体の為替変動リスクを、為替ヘッジによって別途調整します。
日本銀行はマイナス金利政策を解除し、政策金利を0%~0.1%程度の水準へと引き上げたものの、依然として内外の政策金利差は大きく、主要通貨に対する円ヘッジのコストは高止まりしています(図表7)。こうしたなか、クアトロでは、為替ヘッジコストの負担と為替変動リスクとのバランスを両睨みしつつポートフォリオのリスクをコントロールしています。
図表7:米ドル・円レートおよび米ドル・円の為替ヘッジコスト(年率)の推移
日次、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日
※為替ヘッジコストは、スポットレートおよび1ヵ月フォワードレートからピクテ・ジャパンが計算しています。
※クアトロの2024年3月末時点のファンド全体の為替ヘッジコスト(各通貨を総合したコスト、概算値)は年率で約1.6%となっています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
(ご参考)日本と主な先進国の10年国債利回りの比較(2024年4月30日時点)
※為替ヘッジコストは、スポットレートおよび1ヵ月フォワードレートからピクテ・ジャパンが計算しています。
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
基準価額の推移
日次、期間:2013年12月12日(設定日)~2024年4月30日
※基準価額は1万口当たりで表示しています。 ※基準価額は信託報酬等控除後。換金時の費用・税金等は考慮しておりません。 ※破線はご参考で、将来の値動きを示唆するものではありません。
※将来の市場環境の変動等により、当資料に記載の内容が変更される場合があります。
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